五輪の疲労、インフルエンザ発症… それでも90分間ピッチに立ち続けた小柄な川崎“10番”の現在地

大島が五輪で痛感したもの

 大島はリオ五輪で戦った3試合のうち、2試合に先発出場。「世界と戦う上で、中盤の攻撃がどうあるべきか、それを考えさせられた」。それが大会を通じて痛感したことだった。

 クラブ、代表でも中盤にバランスをもたらすゲームメーカーの役割を担っている。しかし、大島自身が課題に挙げているもの、それが“得点に直接絡むプレー”だった。浦和戦でも「後半はミドルシュートを何本か狙うようにしていた」と、ゴールに迫るプレーを心掛けていた。追加点の場面に関しては「チームメートから、打つ前にスペースが空いていると指摘を受けた。だから、あの場面も寸前でパスにした」と言及。大島の判断が、直接的に得点を生み出したのだ。

 五輪では仲間であり、この試合では対戦相手として顔を合わせた遠藤航も「僚太とボランチを組むのはやりやすい。僚太には攻撃を任せられるから、自分は守備に専念できる。だから、役割をはっきりさせられる」と、大島の攻撃力の飛躍に大きな信頼を寄せていたことを明かしている。

 五輪初戦のナイジェリア戦ではチェルシー所属のMFジョン・オビ・ミケルにマークされながらも3得点を演出。第3戦のスウェーデン戦では相手の不意を突くドリブルで左サイドを突破し、矢島慎也の決勝点をアシストした。川崎でも試合を重ねるごとに存在感を増し、先月13日の新潟戦では約20メートルの強烈ミドルシュートを決めている。プロ入りしてから常に立ちはだかり続けた大きな課題を乗り越える準備が整ってきた。

 そして、その壁を打破した大島の存在は、得点に直接絡むボランチを求める日本代表にとっても、長らく求めてきた待望の切り札となるに違いない。小柄な大島の大いなる挑戦は、まだ始まったばかりだ。

【了】

城福達也●文 Tatsuya Jofuku

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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