遠藤航はなぜ“デュエル”で勝てるのか ブンデスリーガで2年連続偉業のワケ、ドイツで際立つ“巧さ”とは?

シュツットガルトの日本代表MF遠藤航【写真:Getty Images】
シュツットガルトの日本代表MF遠藤航【写真:Getty Images】

【ドイツ発コラム】今季デュエル勝利数部門で1位、昨季に続きタイトル防衛に成功

 ブンデスリーガ公式サイトによると、今季デュエル勝利数部門でシュツットガルトの日本代表MF遠藤航が1位に輝いた。その数は実に448回で、見事この部門におけるタイトル防衛に成功している。

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 デュエルというのは解釈の仕方で捉えられ方も変わってくるので改めて整理しておこう。ドイツリーグ連盟(DFL)によると、「両チームの異なる選手がフィジカルコンタクトの可能性がある状況において、自分/自分たちのボール保持のためにしようとするアクション」と定義されている。

 つまり、デュエルにおける勝ちというのは、「フィジカルコンタクトがあるボールを巡る競り合いにおいて、ボールを保持している選手は奪われずにキープ、突破、味方へのパス、あるいはシュートに持ち込んだ場合、逆にボールを持っていない選手がボールを奪い取る、カットする、あるいは相手のパスやシュートアクションを不成立にした場合、勝ちとしてカウントされる」ということだ。ちなみにヘディングにおける競り合いは別項目でカウントされているので、デュエルの数字には加えられないそうだ。

 ボールを持っていた場合のデュエルとボールを奪いに行く場合のデュエルとをまた分けて分析したら違う側面が見えてくるだろうが、とりあえずデュエルに強い選手というのは、「フィジカルコンタクトがあるボールを巡る競り合いで自分たちチームのために優位にすることができる」という解釈は間違っていないはずだ。

 ブンデスリーガにはシンプルなフィジカル的な数値でいえば、遠藤よりももっと強くて、もっと速いという選手は間違いなくほかにもいる。なぜ遠藤はデュエルでこれほどまでに勝つことができるのだろうか。

 デュエルの局面で意識がボールに行ってしまう選手は次のアクションにつなげられないし、相手選手に囲まれてボールを奪われたり、相手の足や身体に引っ掛けてボールを失ってしまったりしてしまう。

 遠藤は相手のチェックを受けながらも、次にいつ、どこへ、どのようなアクションをすべきかのインテリジェンスレベルがとにかく高い。加えて、ぶつかり合いがあるなかで身体を巧みに使いながらボールとの距離を適切に作り出せる。

 そして、身体のぶつけ方がうまい。ぶつけて終わりではなく、ぶつかった後の勢いを次のプレーにつなげていける。だから競り合いの中で相手とボディーコンタクトがありながらも、バランスを崩すことなくボールを前に運ぶことができるのだろう。複数の相手選手に囲まれながらも遠藤が潰されることなくボールを運び出すシーンを何度見たことか。

 守備時のデュエルにおいてはどうだろう。ここは注目点だと思われる。そもそも今季はアンカーが定位置だった昨季とは違い、インサイドハーフでプレーすることが多かった。ということはプレー基準も変わってくることになる。

 突破を許さない、ボールを奪い取ることが求められるアンカーとは違い、インサイドハーフはまず相手にプレスをかける、かけ続ける、後ろを取られたら足を止めずに戻ってスペースを埋めるというタスクが求められる。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで、さまざまなレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス取得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、16-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで精力的に活動している。

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