東大サッカー部と欧州プロクラブの提携 弁護士志望の3年生新米コーチはオーストリア短期留学で何を学んだのか

インスブルックU-23チームを率いるモラス雅輝氏(右)と東京大学運動会ア式蹴球部3年生の岡本康太郎(左)【写真:岡本康太郎】
インスブルックU-23チームを率いるモラス雅輝氏(右)と東京大学運動会ア式蹴球部3年生の岡本康太郎(左)【写真:岡本康太郎】

テクニカルからコーチへ、心に刻むナーゲルスマンの言葉

 岡本はテクニカルスタッフとしてア式蹴球部に入部し、2年間は分析を担当。今年度からトップチームのコーチに着任した。ア式蹴球部ではトップチームのコーチはOBの大学院生が務めるのが慣例となっているが、今年は人手不足だったこともあり、テクニカルとして林陵平監督からの信頼が厚かった岡本に白羽の矢が立ったという。

 テクニカルスタッフからコーチへの転向について岡本は「まだまだですが、やりがいは感じています」という一方で、「前監督の山口遼さん(現Y.S.C.C.セカンド監督)はまさにカリスマ性があるタイプでしたし、去年までヘッドコーチをしていた吉本(理)さんは選手からの信頼がとても厚かったです。今の監督の陵平さんは元プロで経験豊富、すごく威厳もあります。でも僕はまだ3年生だし、別に元プロでもなんでもなく戦術のことをちょっと知っているだけ」と、実績がないなかで指導する立場への葛藤も口にしている。

 しかし、インスブルックでモラス氏の指導に間近に触れた経験は指導者としてのスタンスに早速影響を及ぼしているようだ。前任者と同じ土俵に乗るのではなく、「自分はありのままで、良い部分をみんなに認めてもらえるような形を目指せばいいのかなと思っています」と前向きに言葉を紡いだ。

「最近は自分の中で、特に選手との接し方の部分を意識して変えてみています。インスブルックで実際にモラスさんが指導している姿を見ていると、選手とのコミュニケーションの取り方やチーム全体のマネジメントの部分がすごく参考になりました。僕は元々テクニカルスタッフとして入ったのもあって知識が戦術に偏っているし、選手のモチベートの部分は絶対的に欠けていると認識していました。モラスさんは本当に選手1人1人と向き合って接していました。バイエルン・ミュンヘンの(ユリアン・)ナーゲルスマンが『監督の仕事は戦術が3割、マネジメントが7割』という話をしていましたが、まさにそのことだなと実感しています。

 僕は今、ア式のトップの中でもセカンドチームの選手たちを見ています。試合にスタメンで出られるわけではないけど、Bチームに落ちるほどではない“中間のポジション”にいる選手たち。彼らはプレーのこと、自分の立ち位置のことでいろいろと葛藤する部分が多いですし、そういう選手たちをどのようにモチベートし、前を向いてもらうべきか考えながら実践している最中です」

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