立て直しの1年が降格危機に暗転 苦難のボルシアMGが問われる名門の“底力”

プランがうまくいかなかっ時の“予備案”も必要か

 テュラムはこの試合1得点を挙げたものの、それ以外のシーンではあまり試合に絡めてはいなかった。コンディション的にも後半は走れていない印象があった。それだけに後半途中、ボランチのMFクアディオ・コネに代えてスイス代表FWブレール・エンボロを投入した采配には地元記者も疑問を隠せない。

 試合後の記者会見でその理由を聞かれたヒュッター監督は、「エンボロを入れて2トップにして前線でボールを収めて欲しかった。ただ、思った通りにはいかなかった」と語っていたが、ボールを収められる状況すらなく、前線へのロングボールは伊藤らシュツットガルトDF陣のエネルギッシュな守備にことごとく跳ね返されていく。

 ヒュッター監督はもともとあまり積極的に試合中に選手を交代させるタイプではないが、例えばフランクフルト時代にはそれなりに交替策がはまり、チームに大事な勝ち点をもたらす采配を見せていた。それがいまボルシアMGではハマらない。

 プランを持つことはいい。でも、それがうまくいかなかった時に、それもまったくうまくいっていない時に、チームをそのままにしていたというのがファンには納得できない。やってみてダメだったら、テュラムを下げてシステムを変えるなりやり方を変えて、少なくともシュツットガルトの反撃を抑え込むための何かを感じさせてほしかったはずだ。

 ヒュッター監督が思い描くサッカーと、今のチームが兼ね備えている特徴とかがなかなかマッチしないわけだが、そんなクラブのつまずきは戦力補強から始まっていた。ヒュッター監督はクラブと契約した際に、自身が望む選手獲得の確約を得ていたが、クラブは放出候補だったテュラム、フランス代表FWアラッサン・プレア、スイス代表MFデニス・ザカリア、ドイツ代表DFマティアス・ギンターらの移籍を締結することができず、補強に出せるお金を捻出できなかった。

中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで、さまざまなレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス取得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、16-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで精力的に活動している。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング