立て直しの1年が降格危機に暗転 苦難のボルシアMGが問われる名門の“底力”
【ドイツ発コラム】主将ゾマーは「負けるべくして負けた」とぼやく苦境の日々
ここ10年間でUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場3回、UEFAヨーロッパリーグ(EL)出場3回を果たしているボルシアMGが苦しんでいる。
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昨年2月にマルコ・ローゼ監督が新シーズンからドルトムントの指揮官になることが決定し、そこから調子を落として最終的に8位でフィニッシュ。ELにも出場できず、今季は建て直しの大事な年となるはずだった。
コンスタントにEL、そしてCLに出場できるチームを作るためにと、750万ユーロ(約9億6000万円)もの移籍金を出してフランクフルトからアディ・ヒュッター監督を招集したのはそのためだ。だが、そんなボルシアMGが上位進出どころか、降格危機に直面している。勝ち点的には16位ヘルタ・ベルリンと勝ち点4差はキープできているものの、ここ最近の試合内容はファンを不安にさせている。
MF遠藤航、MF伊藤洋輝が所属するシュツットガルト戦はまさにそんなチームの不安定さが如実に出た試合だった。2-0とリードを奪いながらも、2-3とまさかの逆転負け。特に後半のパフォーマンスは散々なもので、抵抗を見せることができないままやられてしまった。
対抗策が見出せないままなだけに、チームに主力選手の我慢も限界に近づきつつある。キャプテンとして獅子奮迅の活躍を見せているスイス代表GKヤン・ゾマーは、「負けるべくして負けた。特に、後半は相手がワンレベル上だった。すべての分野でだ!このままだとブンデスリーガの試合は1つも勝つことができない。まったくチャンスがなかった。最後の失点シーンを見るだけでそれが分かる。今チームとして問われている」と危機感をマックスに募らせていた。
ゾマーが取り上げた最後の失点は、左サイドをクロアチア代表DFボルナ・ソサが突破し、そこからの折り返しを、オーストリア代表FWサーシャ・カライジッチが右足で押し込んだというもの。まずソサに対峙していたフランス代表FWマルクス・テュラムが途中で追うのを諦めて足を止めてしまう。さらにはゴール前に6選手がいたのだが、全員一列に並んで立っているだけで、誰も相手選手の動きについていっていない。カライジッチにパスが渡った時に慌てて飛び込もうとしたが、時すでに遅しだった。
テュラムの守備には、元ドイツ代表キャプテンでこの試合のテレビ解説をしていたローター・マテウスもぴしゃりだ。
「ソサとの競り合いにいかなかった。そのまま立ち止まっていたんだ。私がチームメイトだったら、『アイツはもうやる気がないんだ!』って思っただろうね。チームやファンに対してありえないアクションだ」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。