「現時点では荒削り」 スーパールーキー松木玖生への期待と“フィジカル頼み”の課題
【識者コラム】開幕スタメンを飾ったFC東京戦は松木を起点にマイボールにする場面も増加
開幕戦の多摩川クラシコでいきなり先発デビューしたFC東京のMF松木玖生は、強烈なミドルシュートが地上波のニュースで取り上げられるなど、注目度がさらに高まっている。選手19人とスタッフ5人の新型コロナウイルス陽性者が出たことで、1週間の活動停止、2月23日のルヴァンカップ・ジュビロ磐田戦と26日のJ1リーグ第2節・名古屋グランパス戦は中止になるなど、厳しい状況にあるFC東京だが、アルベル新監督が率いるチームの希望の星であることは間違いない。
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前述のミドルシュート以外にも持ち前のデュエルの強さ、さらにテクニカルな左足のボールタッチなど、見どころは多い試合だった。環境に物怖じしないメンタルも随所に感じさせたが、攻守で効果的なポジションを取るというところでは、まだまだこれからと言えるかもしれない。
FC東京は4-1-2-3、川崎フロンターレと同じ形をスタートポジションとした。ただし可変性が高く、松木も流れの中で右サイドハーフのような位置にいる時間帯が多かった。そのぶん、右ウイングのFWレアンドロがトップ下のような位置に流れることで、事実上の4-2-3-1になる。
右サイドは主に松木と攻撃的な右サイドバック(SB)のDF渡邊凌磨でチャンスの起点を作り、レアンドロとFWディエゴ・オリヴェイラ、左から流れて来るFW永井謙佑、さらに左インサイドハーフのMF安部柊斗が走り込むことで迫力あるフィニッシュを狙う意図が見られた。
立ち上がりはハイプレスの裏を突かれて川崎の猛攻を受けて、MFチャナティップの危険なドリブルなどから、いつ失点してもおかしくない状況になった。松木も中央でのボールロストから大きなピンチを招くなど、厳しい流れに引っ張られる形で、入りはあまり良いとは言えなかった。
ただ、アルベル監督の志向もあってか、中盤の選手たちが引くことなく前からボールを奪いに行くなかで、川崎の3ハーフを安部、松木が捕まえ出して、高い位置でFC東京がマイボールにするシーンも徐々に増えた前半だった。
前半に松木が放った左足ミドルシュートは盛り返しの象徴的なシーンだ。松木のプレスで川崎がボールをセンターバックのDF谷口彰悟に戻して、右SBのDF山根視来が受けたところに永井がプレスをかけてボールを奪い、ドリブルでえぐったところからの折り返しをディエゴ・オリヴェイラ、レアンドロが細かくつなぐ間に、バイタルエリアに出てきた松木がシュートに持ち込んでいる。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。