心を打った「グッドルーザー」 2021年Jリーグ「注目のトピック」を独自選定

磐田FWルキアンはホーム最終戦のセレモニーで公開プロポーズ

[ftp_del][/ftp_del]【炎のルッカールーム賞】権田修一(清水エスパルス/GK)[ftp_del][/ftp_del]

 清水エスパルスは残留争いの最中にロティーナ監督が退任となり、コーチだった平岡宏章監督が土壇場で引き継ぐことになった。ホームでセレッソ大阪に勝利したが、いまだ厳しい状況で11月27日の第37節アウェー浦和戦を迎えた。コロナ禍の制限により、現地に駆け付けることができない清水のサポーターが横断幕を送り、さらにSNSの応援メッセージもクラブハウスに貼られていたという。

 それらのすべてに目を通したという権田は、試合前のロッカールームで円陣を組むと、そうしたサポーターの思いを仲間たちに伝え、試合に臨んだ。サッカーの試合というものは気持ちだけで結果が決まるわけではないが、この日の清水の選手たちの鬼気迫るプレーが1-0の勝利に結び付いたことは確かだろう。

 そうした思いをピッチやロッカールームに注入するだけでなく、試合後のコメントなどでも示せる権田という選手の存在を改めて思い知らされたシーズンであり、ポルティモネンセから完全移籍に切り替わったということで、日本代表の守護神争いの筆頭として、カタールW杯につながるJリーグでのパフォーマンスも注目される。

[ftp_del][/ftp_del]【公開プロポーズ賞】ルキアン(ジュビロ磐田/FW)[ftp_del][/ftp_del]

 ジュビロ磐田がJ1昇格、そしてJ2優勝を確定させて臨んだブラウブリッツ秋田とのホーム最終節。ヤマハスタジアムにはサプライズが待っていた。秋田に2-1で勝利して有終の美を飾り、京都サンガF.C.のFWピーター・ウタカと得点王を争っていたFWルキアンは厳しいマークに遭いながら、1-1で迎えた後半34分に左のドリブル突破からMF鹿沼直生ゴールをアシストした。

 この日、ゴールはできなかったものの22得点で、単独の得点王に輝いたルキアンはホーム最終戦セレモニーで選手たちがゴール裏の前に集まると、スタンドで待つ女性の元に行き、指輪を取り出した。すでに結婚はしているが、「式も挙げられてなくて、ちゃんとプロポーズしたいと思った」というルキアンの公開プロポーズと”セカンド・イエス”は磐田の選手やサポーターに祝福されることとなった。

[ftp_del][/ftp_del]【グッドルーザー賞】片野坂知宏(大分トリニータ/監督)[ftp_del][/ftp_del]

 天皇杯の決勝で浦和レッズと熱戦を繰り広げながら、最後はDF槙野智章の劇的なゴールで準優勝に終わった大分トリニータ。表彰式では準優勝のメダルを受け取る選手たちの表情は晴々としていたが、そこにはストーリーがあった。

 しかし、試合を終えて悔しさを露わにする選手たちを片野坂知宏監督が呼び寄せて頑張りを称えると、「グッドルーザーになろう」と熱のこもった口調で呼び掛けた。この動画は公式映像でも公開されて、多くのサッカーファンが知るところとなった。

 筆者も今日のグッドルーザーは明日のグッドウィナーになると信じている。片野坂監督は大分を離れることが決まっているが、クラブに残したものは計り知れない。それを新体制になっても残った選手やサポーターがつないでいけるかに注目したいが、観る者に感動を届けるというプロのもう1つの役目を考えれば、すでに1つの勝者となったシーンだった。
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(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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