心を打った「グッドルーザー」 2021年Jリーグ「注目のトピック」を独自選定

(左から)浦和MF明本考浩、岩田FWルキアン、大分の片野坂知宏監督、清水GK権田修一【写真:Getty Images & 高橋 学】
(左から)浦和MF明本考浩、岩田FWルキアン、大分の片野坂知宏監督、清水GK権田修一【写真:Getty Images & 高橋 学】

【識者コラム】2021年Jリーグ「特別表彰」後編、独自で選んだ5部門を紹介

 12月19日に天皇杯の決勝が終わり、2021年シーズンのJリーグが終了した。来年はカタール・ワールドカップ(W杯)イヤーであり、例年より短いオフで新シーズンが開幕を迎えるなか、今シーズンの出来事から10部門を独自に「特別表彰」。後編として、残り5部門を紹介する。

[ftp_del][/ftp_del]【究極のマルチロール賞】明本考浩(浦和レッズ/MF)[ftp_del][/ftp_del]

 J2の栃木SCから浦和に加入した明本は、リカルド・ロドリゲス監督の下でFW、2列目の左右サイドハーフ、トップ下、左サイドバック(SB)など、さまざまなポジションで出場。どこのポジションでもハードワークと球際の強さをベースに、本職さながらにフィットした。

 栃木でも、もともとMFだったところからセンターフォワード(CF)に抜擢されて覚醒。流れの中でも可変性の高い浦和のサッカーを機能させる重要なピースを担っており、優勝した天皇杯も準決勝でDF宇賀神友弥のスーパーゴールをアシストするなど、彼の活躍なくして語れない。

 さらに進化していきそうな浦和で成長を重ねていけば、日本代表でも希少な万能タイプのハードワーカーとして、注目が高まっていく可能性は大いにある。

[ftp_del][/ftp_del]【采配的中賞】鬼木達(川崎フロンターレ/監督)[ftp_del][/ftp_del]

 川崎フロンターレは、圧倒的な強さでリーグ連覇を果たした。最終的には2位の横浜F・マリノスに勝ち点13差をつける歴史的な優勝となったが、長いシーズンを振り返れば、この試合で勝ち点を落としていたら危なかったという節目はいくつか存在する。

 その1つが、9月22日の鹿島アントラーズ戦だった。この時点で1試合消化の多い横浜FMとの勝ち点差は4で、第32節となるこの試合の結果によってスリリングな展開になりうる。鹿島は堅実な守備で川崎の攻撃を抑え込み、FW旗手怜央の豪快なシュートでネットを揺らされたが、FWマルシーニョがオフサイドとなってゴールは認められなかった。

 そして、後半17分にDF安西幸輝の突破からクロスにMFフアン・アラーノが飛び込んで、川崎GKチョン・ソンリョンの牙城を崩す。すると鬼木達監督はFW宮城天、FW小林悠、MF脇坂泰斗を投入して反撃を図った。鹿島の危険なカウンターを受けながらも、相手陣内に押し込んでいく川崎は終盤にFKを獲得したタイミングで長身のMF山村和也が投入される。

 そして、脇坂の正確なキックから山村がファーストタッチとなるヘディングで同点ゴールを決めると、後半アディショナルタイムには川崎らしいパスワークから、最後は宮城がスーパーゴール。試合のなかった横浜FMを突き放した。ライバルを凌駕する高いベースを持ちながら、接戦でも勝負をものにできる川崎の強さが象徴された試合で、鬼木監督の采配はもちろん、期待に応えた選手たちも見事だった。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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