森保ジャパンの「2021年版通信簿」 指揮官のマネジメント、起用法の評価は?

日本代表DF主将吉田麻也【写真:高橋 学】
日本代表DF主将吉田麻也【写真:高橋 学】

コミュニケーションをベースとした「マネジメント」はA評価

■戦術:C-

 森保監督が掲げるのは”ノーマルフットボール”であり、4-2-3-1、最近では4-3-3というベースのシステムと大まかな方向性は監督が決めるが、細かい立ち位置などは選手間で話し合って決めていることも多い様子で、細かいところまでデザインしていくスタンスではない。その点で、どうしても外から見ると頼りない印象を与えてしまうが、代表チームの1つのあり方だろう。

 ただ、4-2-3-1にしても4-3-3にしても相手との噛み合わせ、チョイスする選手のタイプによってストロングとウィークが変わってくる。特に前からの守備のはめ方とうしろからのビルドアップはスタートポジションはもちろん、状況に応じた立ち位置の関係や距離感を監督が提示しないと、相手の戦術的な水準が上がるほど対応しにくくなるだろう。

 また、キャプテンの吉田麻也や中盤の要である遠藤航に何かあった場合、そのまま戦術的なベースもセットバックされてしまうリスクがある。現時点では事なきを得ているが、ここからのサウジアラビア戦やオーストラリア戦、さらにカタールW杯に向けた不安要素ではある。

■マネジメント:A-

「選手をリスペクトしてくれる」と吉田麻也は森保監督を表した通り、チームの和を何よりも大事にする指揮官としての強みは苦しい時期ほど発揮されている。最終予選の初戦をふわっと入ってしまった責任は森保監督にもあるが、負けたあともチームが崩壊した様子もなく、改善に向けて前向きに話し合う環境を作っているのは森保監督のチームならではだ。

 選手と直接話す光景も多く見られる森保監督。コロナ禍で、特に日本代表は感染対策に慎重な体制を取っているなかでも、選手たちがコミュニケーションを取る環境を作り上げていることは地味に高評価して良いポイントだろう。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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