森保ジャパンの「2021年版通信簿」 指揮官のマネジメント、起用法の評価は?

選手交代が当たった試合もあるが、スタメンや交代カードは固定傾向

■起用法:D

 1年間を通して見れば、上半期の親善試合や”消化試合”となった2次予選のキルギス戦などでは、招集した選手を積極的に起用する傾向も出ていた。しかし、東京五輪のあとで迎えた最終予選はオーストラリア戦で4-3-3に踏み切り、初招集の田中碧を抜擢したが、固定的なスタメン、5枚の交代カードもだいたい変わらない傾向が強い。

 さらにベンチ入りできる23人より5人多い28人を招集した11月シリーズでは東京五輪メンバーから招集された前田大然、上田綺世、旗手怜央が2試合続けてベンチ外となり、所属クラブのサポーターやJリーグのファンから厳しい声が飛んだ。欧州組でも2試合続けて出番のなかった板倉滉など、地元メディアの日本代表に対する批判的な記事も出た。

 森保監督が序列を非常に重視するタイプの監督であることが露見されている。ただ、前回予選でのハリルホジッチ監督はともかく、ザックジャパンでも似た傾向があり、多くのフレッシュな選手をテストしたのは予選後だった。そのタイミングが遅かったことが当時のザッケローニ監督の首を締めることになったという意味では不安もある。

■選手交代:C

 5枚の交代枠をどう使うかは大事な要素になっている。0-1で敗れたオマーン戦やサウジアラビア戦では選手交代もうまく行かなかったが、オーストラリア戦では終盤で古橋亨梧、浅野拓磨を投入して伊東純也とスピードのある3トップを形成。最後は浅野がサイド突破からオウンゴールを誘発した。アウェーのオマーン戦は後半スタートから三笘薫を左サイドに投入して流れを一変させるなど、少なくとも選手交代が効果を発揮した試合もある。その一方で中山雄太を左サイドバックに入れて、ビルドアップの安定と守備のリスク管理を強めるなど、勝負のための選手交代は効果的であることも多い。

 ただし、練習やミーティングでの共有不足もあってか、疲労が出始める後半に攻撃的なカードを切ると間延びが顕著に出てしまう。それでも吉田や冨安が後ろにいれば大きなピンチにはなりにくいが、今後そうした選手起用に応じた連携面の強化は最終予選の残り試合、さらにW杯に向けても必要な要素だ。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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