拳に刻まれた魂の4文字 引退を決意したリバプールの英雄がサッカー人生で貫いた一途な愛
現役引退を表明したアッガー
6月9日、元デンマーク代表のダニエル・アッガーは自身のTwitterで静かに物語の終わりを告げた。「皆のサポーターに感謝する。素晴らしい経験だった。悲しいよ。だけど、ここで終わるのが正しい決断だ。自分のキャリアを誇りに思う」。アッガーは、現役生活への別れのメッセージと共に、これまでプレーした代表、クラブのユニホームを並べた画像を投稿した。
画像の内容は、各方向に1枚ユニホームが配置されていて、中央に空いた隙間にアッガーの突き出した拳の写真が置かれているといったものだった。
そして突き出された拳の指には、4本それぞれにアルファベットのタトゥーが刻み込まれている。それは左から「Y」「N」「W」「A」。これは、リバプールの象徴的なチャントである「You’ll Never Walk Alone」の単語の頭文字をとったものだ。
アッガーは2006年に母国のブレンビーからリバプールに加入。1年目からレギュラーの座に定着し、強靭なフィジカルコンタクト、精度の高いロングフィード、そして自陣から持ち込んでの強烈な左足のミドルシュートを武器に、プレミアリーグでも指折りのCBへと飛躍を遂げた。
2013年には、バルセロナからのオファーを受けたが、「リバプールに残るという決断に後悔はなかった」と、選手として最大の栄誉でもあるバルサからの引き抜きを断っていた事実をインタビューで明かしている。
2014年には、当時の指揮官ブレンダン・ロジャース前監督(現セルティック)との確執から、最終的に退団を決断。サポーターに深く愛されたCBのリバプールでの旅は、8年間で幕を降ろすこととなった。
当時29歳と、選手としてピークを迎える年齢にも関わらず、アッガーは古巣のブレンビーに帰還する道を選んだ。まだビッグクラブでやれるだけの立場にあるのにも関わらず、だ。