ドイツで1年半ぶりにミックスゾーン復活 原口元気の丁寧な対応、そこにしかない価値
2021年10月3日マインツ対ウニオン・ベルリン戦で選手と直接話せる機会が戻ってきた
ブンデスリーガでミックスゾーン(取材エリア)が復活。ドイツでは2020年3月9日ブンデスリーガ2部のシュツットガルト対ビーレフェルト戦以降、選手に直接話が聞けるミックスゾーンが閉ざされていたのだが、21年10月3日に行われたマインツ対ウニオン・ベルリン戦では試合後にジャーナリストが選手と直接話せる機会が戻ってきた。これはドイツにおける新型コロナウィルス対策が次の段階に入ったことを意味する。
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今季これまで新型コロナウィルスの影響からブンデスリーガでは部分的に観客席を解放してきた。他の欧州諸国ではすでに解放率も相当高い国々もあるわけだが、そこはドイツ。
これまではスタジアムキャパシティーの50%かマックス2万5000人に限定し、そこからの緩和にはとても慎重になっていた。隣り合わせの席を使用しないように調整されていたし、スタジアムの入場者コントロールでは「Geimpft:ワクチン接種証明」「Genesen:感染回復済証明」「Getestet:抗原検査ネガティブ証明」のいずれかの提示が必要に。
そんなドイツでもワクチン接種者が全体の65%近くになってきたことで、ワクチン接種者への対策がだいぶ緩和されるようになっている。このマインツ対ウニオン戦ではスタジアムの最大収容の75%までの観客動員が州から許可されたことになっていた。
チケット販売に関しては「2Gプラス」という方針を導入。「Getestet:抗原検査ネガティブ証明」はわずかに1000席分だけで、残りは「Geimpf:予防接種済」「Genesen:感染後回復」の人だけを対象。そうすることでこの試合からオフィシャルに観客席ではマスクなしで問題がなくなった。
ワクチン接種をすることで社会的な自由を取り戻していけるようになったというのは嬉しいニュースである反面、ワクチン接種をしない人への風当たりはこれまで以上に強くなってきているのは確かに感じている。それこそリバープールのユルゲン・クロップ監督が「飲酒運転は法律で許されないから我々はしない。でも飲酒運転が禁止されることを自由の制限になるというだろうか。ワクチンを打たないのは(そうした)飲酒運転と同じだと思う」というニュアンスの発言をしていたが、まさにそういうことではないだろうか。
いずれにしてもこうした緩和対策が進んできたことで、我々ジャーナリストが現場で受ける恩恵もとても大きくなってきている。メディアの取材申請にも人数制限が設けられていたし、何とか申請が通っても試合後の監督記者会見はリモートで、選手インタビューはテレビのみに限定。多くを望めないことはみんな分かっているし、そうした状況への慣れもあったのも確かだ。だからこそ、久しぶりとなるミックスゾーンの解放は大きな意味を持っていた。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。