ブンデス上位陣と「監督大移動」 活発化する“指揮官の移籍”が今後スタンダードに?

監督の移籍にも影響を及ぼす代理人の存在

 例えばローゼは、ボルシアMGからドルトムントへ移籍することになったわけだが、ボルシアMGのマックス・エッベルGMは「固定違約金での移籍条項を取り込まなければ、そもそもザルツブルクから獲得することはできなかった。今日のサッカー界では普通の流れになってきている」と明かしていたことがある。

 一方的にどちらかが有利になるための条項ではなく、お互いによりクリアな条件下で交渉をしようとするなかで生まれてきたものではある。だから同じような流れで、エッベルはフランクフルトからヒュッターを獲得することに成功している。

 選手はどのようにステップアップを果たして、成長していこうかというキャリアプランを描くが、それは指導者も同様だ。もちろん何をもってステップアップと取るかは人それぞれだが、ローゼはオーストリア・ブンデスリーガのザルツブルクから、ドイツのブンデスリーガで伝統クラブのボルシアMG、そしてUEFAチャンピオンズリーグ(CL)常連でドイツでナンバー2争いをしているドルトムントと活躍の場を移している。

 ヒュッターもグラスナーも移籍条項があったから、新天地を見つけることができたし、元オランダ代表監督ロナルド・クーマンはそれがあったから、バルセロナ監督になることができた。

 これまで以上に積極的になってきている監督の移籍に関して、影響を及ぼしているのが代理人だ。ドイツプロコーチ連盟会長ルッツ・ハルガルトナーは「監督も代理人を持つようになり、様々な交渉を代行するわけだが、自分のクライアントが移籍をすることに間違いなく興味を持っている。そうした時代だということだ。サッカーも社会現象の鏡」と指摘している。

 ただ今回、ブンデスリーガではあまりに多くの監督が移籍することになったため、ファンからの「監督とどんな契約を結んでいるか」をチェックする目は、これまで以上に厳しくなってきている。例えばヒュッターはボルシアMG移籍に際して、契約期間中に条件付きで移籍可能となる条項は盛り込まれていない。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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