ドイツ代表、“レーブ時代”の終焉 独メディアから批判されても曲げなかった信念

ドイツを率いたレーブ監督が退任【写真:Getty Images】
ドイツを率いたレーブ監督が退任【写真:Getty Images】

【ドイツ発コラム】イングランドに敗れてEURO16強敗退、レーブ監督はこの試合限りで退任

 欧州選手権(EURO)決勝トーナメント1回戦のイングランド戦(0-2)が、ドイツ代表監督ヨアヒム・レーブのラストマッチになってしまった。

「もちろん、みんなのがっかりは大きい。この大会に向けてすごく頑張ってきたし、いい準備もできていた。いいチームスピリットもあった。でも最後のところをピッチへもたらすことができなかった。ヴェルナーとミュラーと2つのビックチャンスを生かすことができなかった。今日のような試合ではあれを決めなければ。大きな熱狂をホームに届けることができず、申し訳なかった」と試合後に振り返っていたレーブ。今大会限りで代表監督を引退することを表明していたが、こうした終わり方は想定していなかっただろう。優勝とまでは言わなくとも、終幕はもっと後にくると思っていたはずだ。

 イングランド戦後には、終盤2点を追う展開ながら交代が遅くなったことに批判的な指摘が集まっている。元ドイツ代表キャプテンのミヒャエル・バラックは、「なぜあんなに引いてしまったのか。イングランドの弱点を突くことができなかった。カードを切るのにあれだけ時間がかかったのも理解できない」と語り、ヘルタ・ベルリンの代表取締役となったフレディ・ボビッチは「順当に敗退となってしまった。攻撃に勇気が欠けていた。非常に受け身に感じた。チャンスを逃したことは残念だ」と指摘している。

 ごもっともな意見だとは思う。上手くいかなかった試合の後には、みんな「他にもっとやり方があったのではないか」と声をあげる。監督は大変だ。ドイツ代表だけではなく、チェコに敗れたオランダ代表監督フランク・デ・ブールも、スイスに大逆転負けを喫したフランス代表監督ディディエ・デシャンも、痛烈な批判と向き合わなければならない。

 ファンも識者も、プレッシャーもない外から監督の采配にあれこれ言うことはできる。「もっと早く交代すればいいのに」「他の選手を起用すればいいのに」……それは分かる。でも監督にしても、試合中に動こうにも動けないことだってある。試合前にどれだけ準備をしていても、その時にどんな判断をすればいいかは実際に試合にならないと分からないことが多い。

 ピッチ横で試合を追いながら、いろんなことを瞬時に決断しなければならないと頭を動かそうとするけど、ピタッとハマる答えが見つからないことだってあるのだ。何かを変えるには、どこかにリスクが生じることを意味する。そこをカバーするにはどうしたらいいのか、そこから崩されたらどうするのか。代えたいけど、それが意図通り伝わらないことも考えるだろうし、伝えるためにはどんな交代策が必要かを考える。そうした葛藤や自問自答をしている間にも、試合は進んでいく。外から見たら後手に回り、最終的に時すでに遅しとなってしまう。

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中野吉之伴

1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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