強硬な名門3クラブ、近づく“最悪の結末” 負債額は数百億円…UEFAに徹底抗戦の背景

コロナ禍で欧州トップ32クラブの資産が約8216億円も目減りしたと試算

 どうしてここまで、3クラブは欧州SLにしがみつくのか。ガチで敵対したUEFAは無論のこと、発足メンバー以外の全欧州クラブ、ファン、メディア、そして仲間だった9クラブにもそっぽをむかれて、まさに四面楚歌の状態。しかも、このままではUEFAも鉄槌を振るわなければならなくなり、本当に欧州カップ戦から追放される瀬戸際に追い込まれている。

 その懲戒のタイミングは、来月開幕する欧州選手権(EURO)の開催前後だろうか。新型コロナウイルスのパンデミックで1年延期され、6月11日から1カ月間にわたって開催される欧州王者決定戦の開幕前、もしくは閉幕後に3クラブの懲戒、つまり欧州カップ戦からの追放が発表されそうだ。

 もちろん、UEFAとしても世界的な人気を誇る3つの超ビッグクラブ抜きで、来季以降のCLを行うという事態はぜひとも避けたいところ。そもそも、それが今回のチキンレースを成立させる大きな理由ではある。

 こうした切羽詰まった状況で、また一つ気になるニュースが入ってきた。「BBC」の報道によると、欧州のKPMG(世界4大会計事務所の一つ)が、今回のパンデミックが与えた経済的影響で、欧州トップ32クラブの資産が合計52億7000万ポンド(約8216億円)も目減りしたと試算したという。

 個々のクラブの資産減少率に関しては「ユナイテッドが前年2020年との比較で20%の目減り」という記述がある程度で、その詳細は不明だが、当然ながらUEFAと激しく戦う3クラブの資産価値も大きく削られたと見て間違いない。

 とすれば、巨大な負債額を背負う3クラブがさらに窮地に追い詰められたと見てもいいだろう。クラブの資産価値が下がれば、パンデミック不況との悪い相乗効果も生まれ、今後の運転資金の借り入れにも影響が出るはずだ。

 3クラブにとっての欧州SL発足の最大理由が負債を解消することだとすると、今では絵に描いた餅のような話になってしまっているが、米投資銀行JPモルガンが準備したと報じられた、優勝チームは最大7億ユーロ(約938億円)、最低でも参加チームに3億ユーロ(約402億円)という分配金がどうしても不可欠になる。

 一部報道では、近年の放漫経営がたたり、バルセロナは総計1億ユーロ以上の負債があり、年内の清算が迫られている火急の借金だけでも、偶然ながら今回のSL参加クラブへの最低分配金と同額の“3億ユーロ”と言われている。

 またレアルのペレス会長は、SL発足直後に出演したテレビ番組中で、今季終了後にクラブの負債が「4億ユーロ(約536億円)に達する」と発言。さらに負債額は明らかではないが、ユベントスもクリスティアーノ・ロナウドの高額年俸が負担となり、放出報道が後を絶たない。

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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