英国で「フットボールは格闘技」と言うけれど… プレミア選手、路上での暴力事件に唖然

年俸1.5億円超えの選手が、一瞬で地位を台無しにする事件を起こすとは…

 被害者となった21歳の保険ブローカー、エリオット・ライト君の証言によると、きっかけは路上で女性と口論していたマクバーニーを見つけた同君が、「落ち着けよ! 降格に比べたら大したことないだろ!?」と一声かけたことだったという。

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 すると恋人だろうか、女性との口喧嘩ですでにヒートアップしていたマクバーニーが、こともあろうにライト君に脱兎のごとく駆け寄り「録画するんじゃねえ」と叫んで、殴りかかってきたのだ。

 プロフィールを見ると、188センチ・79キロの巨漢FW。しかも赤髭を蓄えた顔はけっこう険しく、こんな男が駆け寄ってきたと思っただけで恐ろしい。それなのに、こんな体躯と顔面を持つ男が、イングランドの最高レベルを戦うまで鍛えられた体力を持って襲ってきたのである。

 その身の毛もよだつようなシーンは、被害者が録画した動画にきっちり捉えられているうえ、「ザ・サン」紙が掲載した写真を見ると、殴られたライト君の左目は青あざに囲まれて腫れ上がっており、加害者のマクバーニーには言い逃れのできない確たる証拠が残った。

 しかも4月11日に行われたアーセナル戦(0-3)で中足骨を骨折し、来月の欧州選手権は欠場と言われていた身で、この騒ぎを起こした。昨年には飲酒運転で3万ポンド(約474万円)の罰金を科した所属クラブのシェフィールドは、事件を「早急に調査する」と発表。地元のヨーク州警察も「訴えがあれば捜査に乗り出す」と話しており、後日談も注目される事件になっている(※その後に逮捕と報道)。

 しかしそれにしても、週給2万ポンド(約316万円)というから、日本円にして年俸1億5800万円の選手。しかも故障中で自粛が求められる状況で、自分の地位を一瞬にして台無しにするような暴力行為を犯してしまうものか。

 エリック・カントナがヤジを浴びせた観客に飛び蹴りを食らわせた“カンフー・キック事件”も今や26年前の遠い昔。筆者がプレミア取材を始めた2000年代初頭には、試合後に警察の大型バンに詰め込まれた血塗れの男たちや、ホームの観客席でアウェー・チームのゴールをセレブレーションした男があっという間にボコボコにされたシーンも目撃したが、そうした光景も最近では全く見かけなくなっていた。

 ところがどっこい、21世紀になって21年が過ぎ、暴力反対の機運とハードルはさらに厳しく高まる一方だというのに、今回のマクバーニーの事件は、改めて、英国人のフットボールと喧嘩好きの相関関係について考えさせられる事象となった。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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