「浦和に恩返しがしたかった」 元Jリーガーが保育園開園、サラリーマンを経た新たな道

現在は地元の浦和の小規模保育施設で管理者を務める三上卓哉氏【写真:河野 正】
現在は地元の浦和の小規模保育施設で管理者を務める三上卓哉氏【写真:河野 正】

【元プロサッカー選手の転身録】三上卓哉(元浦和、京都、愛媛)後編:2011年に引退、「イメージしたことがなかった」サラリーマンの道へ進む

 世界屈指の人気スポーツであるサッカーでプロまでたどり着く人間はほんのひと握り。その弱肉強食の世界で誰もが羨む成功を手にする者もいれば、早々とスパイクを脱ぐ者もいる。サッカーに人生をかけ、懸命に戦い続けた彼らは引退後に何を思うのか。「Football ZONE web」では元プロサッカー選手たちに焦点を当て、その第2の人生を追った。
 
 今回の「転身録」は浦和レッズ、京都パープルサンガ(当時)、愛媛FCを渡り歩いた三上卓哉(41歳)だ。2002年に加入した浦和では思うように出場機会を得られなかったが、京都、愛媛では主力としてプレー。現役引退後はサラリーマンとなり、現在は地元の浦和に小規模保育施設「ルアナ保育園」を開所し、管理者としての日々をスタートさせている。後編では引退後に入社し、サラリーマンとして新たなスタートを切った「アイル・コーポレーション」での日々、そして保育園の管理者という新たな道へ進む姿を追った。(取材・文=河野 正)

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 J2愛媛FCは2011年11月25日、4年間在籍したDF三上卓哉の現役引退を発表したが、本人は年頭からこの年を最後のシーズンにする腹を固めていた。

 とはいえ、セカンドキャリアについての具体案は持ち合わせていなかった。漠然とサッカーの指導に携わりたいと考え、日本協会公認の指導者資格B級は取得しておいた。古巣の浦和レッズが展開するハートフルクラブのコーチも考えたが、たまたま採用枠のない年だった。

 そうして「イメージしたことが全くなかった」と言うサラリーマンの道を模索する。浦和のパートナー(スポンサー)企業であるアイルグループに応募。11年12月17日、浦和と対戦した第91回天皇杯4回戦がラストゲームとなったが、その翌日から面接を3度受け、与えられたテーマに沿ったレポートを提出するなどして正社員として採用された。

 入社したのは天皇杯から約1カ月後の新春1月半ばだ。「嫁さんと幼稚園児の長男を愛媛に残し、家族が引っ越してくる3月まで浦和で“逆単身赴任”生活でした」と苦笑する。

 アイルグループは建物や公園などの総合管理を手掛けるアイル・コーポレーション株式会社をはじめ、7つの法人を傘下に置き、環境と福祉事業で業績を伸ばした優良企業だ。浦和とのパートナーシップは15年以上で、浦和レッズレディースも支援。昨季のプレナスなでしこリーグで3度目の優勝を飾り、2度目のベストイレブンに輝いた主将の元日本女子代表MF柴田華絵は、アイル・コーポレーションに勤務する。

河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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