限界が見え始めたFC東京の「強烈な個」頼み 3連敗で露呈した“攻め手”の欠如

象徴的だった両チーム“10番”のプレー

 例えば象徴的だったのが、FC東京と鳥栖の両チーム“10番”のプレーだった。FC東京の東慶悟は序盤に相手の10番樋口からボールを奪い取り、絶好のショートカウンターのチャンスを迎えた。だが東は奪った瞬間にサポートを待ってスピードダウン。味方が相手DFを引きつけたので、フリーになったことを確認しシュートに踏み切るがブロックされた。誤った選択とは言い切れない。しかしボールを奪った瞬間の東の第一選択肢は、いかに味方を使うかであり、仕掛けではなかった。

 確かに東は攻守に献身的なプレーを見せて計算のできる選手だが、冒険はない。一方樋口は、序盤に危険エリアで東にボールを奪われる大きなミスを犯したのに、一切それを引きずることがなかった。ボールを受ければ2度の決定機を演出し、前半34分には躊躇なく鮮烈なミドルシュートを突き刺している。守備への貢献が申し分ないうえに、常にバイタルエリアでは躊躇なく最も相手に脅威になる選択を繰り返している。

 ロンドン五輪で活躍した東と樋口では、知名度の差は明白だ。そして鳥栖の金監督も両チームを比較し「やはり個々の力の差はある」と言明する。ただし鳥栖には鮮度や勢いをもたらす費用対効果の高い選手が揃い、毎試合完全燃焼を繰り返しながら成長している。こうなるとサッカーに限らずスポーツの世界では、成熟途上の勢いが完成品を凌駕してしまうことがよく起こるのだ。

 もちろんFC東京の出遅れには、昨年末のACLでの激闘も影響している。もしブラジルトリオのコンディションが向上し、夏場に向けてスペースが広がり始めれば特長が見え始め、勝負強さを取り戻すのかもしれない。だがそんな他力本願は、本質的な解決策にはならない。もはや堅守速攻が唯一の道では、王者川崎に肉薄するのは難しい。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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