CL決勝はマンC対レアル? 傑出した“本命”と最先端の戦術を破る“試合巧者”

チームの核を担うマンCのMFケビン・デ・ブライネとレアルMFルカ・モドリッチ【写真:AP】
チームの核を担うマンCのMFケビン・デ・ブライネとレアルMFルカ・モドリッチ【写真:AP】

【識者コラム】CL4強決定、2大エースのPSGと最先端のマンCが激突

 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のベスト4が出揃い、準決勝はパリ・サンジェルマン(PSG)対マンチェスター・シティ、レアル・マドリード対チェルシーとなった。

 PSGはバイエルン・ミュンヘンを破って、昨季ファイナルのリベンジを果たした。なんと言ってもこのチームにはネイマール、キリアン・ムバッペの2人がいる。まともにカウンターアタックを食らって止められるチームはないだろう。

 バイエルンは優勝した昨季から少しパワーダウンしていた。おまけに準々決勝では大エースのロベルト・レバンドフスキを欠いたのが痛い。看板のハイプレスもPSGの巧みなパスワークで何度か外されている。逆に言うと、バイエルンのプレッシャーに怯まずにボールの出口を探り続けたのがPSGの勝因だった。ハイプレスを外してネイマール、ムバッペにつなげば高速カウンターが発動する。リスクはあるが、“肉を切らせて骨を断つ”戦法が奏功した。

 PSGのバイエルン攻略は、現在の戦術的な傾向であるハイプレスにどう対抗するかの見本と言える。狭小エリアをくぐり抜けるテクニックと、圧倒的なスピードのアタッカーの組み合わせだ。

 このPSGと準決勝で対戦するシティは、今季の本命だ。

 ポジショナルプレーの最先端。ポジショナルプレーの要諦は攻守に5レーンを埋めることだが、シティの敵陣に入った時の「WM」の配置がまさにそれである。ただ、昔のWMと違ってレーンにいる選手の互換性がある。ジョアン・カンセロはその象徴で、左右だけでなく前後にも立ち位置を変えられる。右ウイング専門のリヤド・マフレズのように互換性のないスペシャリストもいるが、ほとんどの選手がレーンをまたいで動けるため、かつてないほど流動的な攻守を展開している。

 ジョゼップ・グアルディオラ監督の率いるチームは、バルセロナでもバイエルンでもボールを運ぶことにかけては傑出していた。シティも最高レベルに達した。一方、アタッキングサードからの崩しに関しては、持ち駒の個性を最大限に生かしてきた。バルサではリオネル・メッシの“偽9番”、バイエルンではレバンドフスキとトーマス・ミュラーのためのクロスボールだったが、シティではそこがはっきりしていなかった。ケビン・デ・ブライネの高速ロークロスは得点源だが、フィニッシャーのほうに決定版がない。

 今季、セルヒオ・アグエロとガブリエル・ジェズスのストライカー2人が欠場を余儀なくされた。そこでおそらく苦肉の策として採用した“偽9番”、というかゼロトップがはまった。特定のストライカーに点を取らせるのではなく、パスワークを生かして誰もが点を取る捉えどころのないアプローチになっている。エースストライカーへの忖度がないという意味で、最もペップらしいチームに仕上がっているのではないか。2大エースのPSGとは好対照と言える。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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