山口の流れを断ち切った凌我、前半途中からは優平の一人舞台

　断ち切ったのは東京Vの凌我。今季明治大から加入したイケメンストライカーは失点から2分後、中盤に下りて最終ラインの平智広から縦パスを受けると、左サイドに展開し、反転してゴール前へ走り出す。タッチライン際で受けた福村貴幸からのクロスを梶川諒太がスルー。その後ろから走り込んだ凌我がインサイドキックで丁寧に流し込み、東京Vがあっという間に追いついた。

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　凌我はさらに2分後、中盤で小池純輝へサイドチェンジを送り、若狭大志を経由して戻ってきたボールをペナルティーエリア内でシュート。惜しくも枠を逸れたが、山口は完全に浮き足立った。

　東京Vの1トップは、永井監督の命名による“フリーマンストライカー”、略して“フリーマン”と呼ばれる。中盤に下りボールをさばいて崩しの起点となるだけでなく、背後へ動き出して相手の最終ラインを下げ、最終的にはゴール前に現れて得点を求められる。永井監督はこのポジションに9番的な選手よりも10番的な選手を置くことを好む傾向があり、どうしても相手の最終ラインを下げる、最終的に得点するという部分が足りなかったことは否めない。

　その点で、凌我は起点となる仕事に関しては技術的に課題を残すが、それを補って余りあるものをチームにもたらしている。「凌我のスプリント回数はチームで一番多く、（相手の）ラインを下げること、中盤に下りてくるところ、そしてファーストディフェンダーとして守備のスイッチを入れるところ、本当に毎試合よくやってくれている」と指揮官は称賛を惜しまない。何より生粋のストライカーであり、同じ名字を持つ偉大なる佐藤寿人（元サンフレッチェ広島ほか）のように常にゴールを狙っている存在は、守備陣にとっては嫌なものだ。前節で初スタメンを飾ると2ゴールを挙げ、今節も連続ゴールを記録して得点ランキングも8位タイに上昇した。

　話を試合に戻そう。中盤がボールを持てば凌我が最終ラインの裏を襲い、凌我が中盤に下りれば小池や山下の俊足両ワイドストライカーが裏を襲う。山口の最終ラインと中盤の間は間延びし、そのスペースを得てこの試合で最も輝いたのが優平だった。

　横浜F・マリノスで育ち、アルビレックス新潟、モンテディオ山形を経て東京Vで4年目を迎えるゲームメーカーは前半24分、中盤でターンしながらボールを受けると間髪入れずに小池にスルーパス。スピードに乗った小池の切り返しに山口のディフェンダーは振り回され、シュートは股下を抜ける。GK関憲太郎がセーブしたものの、逆サイドから飛び込んできた“猟犬”山下がこぼれ球を仕留めて東京Vが逆転に成功した。