伝統の勝負強さはどこへ… “優勝候補”鹿島、2年連続スタートダッシュ失敗の誤算

今季早くも4敗目となった鹿島アントラーズ【写真:Getty Images】
今季早くも4敗目となった鹿島アントラーズ【写真:Getty Images】

【識者コラム】浦和に1-2で敗れ今季4敗目、ポゼッション追求も相手の守備に苦しみ完敗

 スタートダッシュに失敗した元アジア王者同士が代表ウィーク中断明けに顔を合わせたが、内容は好対照を成した。

 ホームで会心の試合を見せた浦和レッズに対し、鹿島アントラーズのザーゴ監督は「就任以来最悪の試合」と評した。両チームともに現監督招聘の狙いは同じで、ポゼッションを高めて主導するゲーム作りを目指している。

 鹿島のザーゴ監督は昨年就任すると、堅守を基盤に勝負強さを貫く伝統を覆す哲学を浸透させるのに苦労した。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフでは敗戦し、Jリーグでも開幕から4連敗と過去に例を見ないどん底状態に陥った。それでも途中からは見違えるように修正し5位でフィニッシュ。終盤にACLの出場権争いで競り負けたあたりは、偉大な歴史との違和感を覚えたが、研磨が見込める2年目は上位戦線に食い込むという見方が大勢を占めていた。

 確かに開幕からザーゴ監督の色は表現できていた。ホームでの4試合はすべて相手をポゼッションで上回り、開幕からの3戦は600本以上のパスを繋ぎ、相手を300本台に抑えて20本以上のシュートを放っている。だが浦和戦では、自陣で浦和の厳しく活発な守備に苦しみ「ボランチの後ろを活用され」(ザーゴ監督)、センターバック(CB)が食いつけば裏を突かれるなど再三ピンチを招き、内容は完敗だった。

 一方、浦和はアンカーに起用された柴戸海が両CBの間に降りてビルドアップの起点となり両サイドバック(SB)を高い位置に押し出すとともに、前線では5人の選手たちが流動的に動き、“偽1トップ”的な武藤雄樹が1列降りてボールを引き出せば開けたスペースへ2列目からMFが飛び出した。

 先制シーンは、決めた明本考浩が「チームにとってもいいゴール」と振り返るように、左一杯に広がった位置から小泉佳穂がサイドチェンジし、右SBに入った西大伍が裏へ抜けていく明本へ正確にアシストした。裏返せば、序盤から自陣に押し込められていた鹿島は、小泉、西、明本と3人に余裕を持ってボールを蹴らせている。その後も浦和は前がかりにボールを奪いに出てショートカウンターを狙い、スペースを見つけて活用し続けたので、むしろ1点差に止まったのが誤算というべき試合だった。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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