被災Jリーガー、避難所を回り流した涙 震災10年、仙台MF関口が伝えたいこと【#あれから私は】

日本代表と対戦するJリーグ選抜としてメンバーに選ばれた関口【写真:Getty Images】
日本代表と対戦するJリーグ選抜としてメンバーに選ばれた関口【写真:Getty Images】

「サッカーをやれる精神状態でもなかった」関口の背中を押したカズの言葉とゴール

 東北が苦しんでいる――。どうしてもサッカーに打ち込む勇気が持てなかった。そんな時に決まったのが、11年3月29日に行われた東日本大震災復興支援チャリティーマッチ「がんばろうニッポン!」だった。関口は日本代表と対戦するJリーグ選抜としてメンバーに選ばれた。

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「正直サッカーをやれる精神状態でもなかったし、被災地の方が苦しんでいるなかでサッカーをやっていいのかな、という気持ちだった。でも、クラブに送り出してもらって、行くことに決めた」

 チャリティーマッチでは東北出身の鹿島アントラーズMF小笠原満男氏や、カズことFW三浦知良(横浜FC)に声をかけられた。「サッカーで勇気を与えよう」。その言葉に背中を押され、「自分も中途半端なプレーはできない」と、プロとしてスイッチが入った。

「カズさんが試合で(ゴールを)決めて、カズダンスというパフォーマンスをしてくれた。カズダンスは被災地に勇気を届けるパフォーマンスだった。自分自身もサッカーでしか皆さんに夢や希望や元気を与えることができないと思ったので、できることをやろう、と。サッカーを頑張ろうという気持ちにさせてもらえたゴールだった」

 被災から18日後。長居スタジアムで開催された日本代表とJリーグ選抜の一戦で、刻まれた歴史的な一発。0-2の後半17分から途中出場したカズは、同37分にGK川口能活のロングフィードからDF田中マルクス闘莉王が頭で落としたボールに反応。相手GKとの1対1からネットを揺らすと、スタンドに向かってカズダンスを披露した。このパフォーマンスを見て、関口も心を決めた。

 サッカーで被災地に勇気を与えると決意した一方で、ボランティア活動を始め、避難所や仮設住宅も訪問。子どもたちとボールを蹴ったり、炊き出しを手伝った。

「お菓子を持って回らせてもらったりして、子どもたちと触れ合った。すごく落ち込んでいたり、『家流されちゃったんだ』という話も聞いた。でもまだ子どもで、どれぐらい大変なことか理解していない様子だった。それを聞いていた親御さんは今後どうしたらいいのかすごく不安だったと思う。そのなかで自分ができることは、1人でも多くの人に元気になってもらえるように何かするということしかなかった」

 ボランティアからの帰り道、自身の無力さに気付き、1人車の中で涙が止まらない日もあった。

「自分が行っても、子どもたちのストレスを完全に取り切ることができないし、泣きながら帰ってきたこともあった。でも、自分がピッチに立って試合に勝つ姿を見てまた頑張ろうとみんなが思ってくれていた。一番は試合に勝つことが必要だった」

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