日本人の「空気を読む」能力は武器になる ドイツで戦う“ホペイロ”、海外との違いを証言

ドイツで身につけた「できないことをできないと伝えること」

「簡単な例だと、試合後にタオルがもう一枚欲しいって選手は裸で動き回ったりするのでタオルを渡すとか。特に海外だと、『何も言ってないのに、なんで欲しいのを出してくれるんだ?』って選手もそれで驚きがあるみたいですね。お前すげぇなってなったりします(笑)」

 逆にドイツの地で身につけた能力として、「できないことをできないとしっかり伝えること」だと話す。基本的にいつもポジティブ思考でニコニコしている神原。それでも忙しい時に、無理難題を振られたりすると、さすがに気分を害することもある。

「相当バタバタしている時に『まだ洗濯終わってないの?』とか、『あれが欲しいんだけど』とか物理的にできないことを言われると、イラっとしたりはします(笑)。でもそのあたりのコミュニケーションの取り方は身についたなと思います。こっちの人はそこまで深く考えずにすぐ聞いてくることが多いので、できないことはできないと言って軽く流す。すると向こうも、『お前ができてないって言うなら、そうなんだろうな。ごめん、ごめん』みたいに、そこはちゃんと謝ってくれる。信頼関係ができてるからというのもありますが、『できないことはできない』とはっきり言う大切さはドイツに来て学びましたね。日本人って、そこがなかなかできなかったりするじゃないですか」

 ドレスデンで働き始めて4カ月が経った。自分の今までやってきたことをしっかりやっていれば、ここでもしっかり評価されるという感触を得ているという。

「働き始めた当初は仕事をこなすので精一杯だったんですけど、新シーズンが始まって、徐々に自分らしさを出しながら仕事ができるようになったという実感もあるし、手応えもありますね。新しいトレーニングセンターができたここの働く環境は、イェーナに比べて圧倒的に良いです。より仕事に集中できる環境がドレスデンでは整っていると思います」

 そんな様々な環境の中で様々な経験をしている神原だが、ホペイロの彼から見て、選手の立ち振る舞いやスタッフに対する気遣いから、「この選手は伸びそうだな」と思うことはあるのだろうか。最後に尋ねてみた。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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