横浜FMの攻撃スタイルは「一つの負けで変わらない」 ルヴァン杯4強敗退も貫いた意志

積極果敢に柏ゴールへと迫った横浜FM【写真:小林 靖】
積極果敢に柏ゴールへと迫った横浜FM【写真:小林 靖】

【J番記者コラム】多彩な攻撃からシュート20本も柏の牙城を崩せず

 横浜F・マリノスは3日前のヴィッセル神戸戦と同じシステムと戦術を選択し、スタメン変更はわずか2選手にとどめた。中2~3日が続く連戦でフィールドプレーヤーの半数を入れ替えることも珍しくないマネジメントを採用してきたチームにとっての決断は、ルヴァンカップのファイナル進出への強い意欲の表れだった。

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 序盤から出足鋭く、柏レイソルを圧倒していく。状況によって選手が柔軟に立ち位置を変える可変型システムを初めて採用した神戸戦からブラッシュアップしたサッカーを披露。圧倒的に押し込むゲーム展開は同じでも、神戸戦のようにクロス過多に陥ることなくインサイドとアウトサイドを使い分けて決定機を作り出せていた。開始3分にFWマルコス・ジュニオールがフリーで放ったダイビングヘッドがゴールネットを揺らしていれば、展開はまったく違ったものになっていただろう。

 前半11分にセットプレーから手痛い先制を許したが、横浜FMは変わらず柏陣内で多くの時間を過ごした。後半、柏に許したシュートはわずかに2本。その2本ともFWオルンガの決定機で肝を冷やしたものの、カウンターによる失点リスクよりもポゼッションからの多彩な攻めで同点ゴール、そして逆転ゴールを横浜FMが挙げられるチャンスのほうが明らかに多かった。

 前後半で20本のシュートを集め、後半の決定機は片手の指で数えきれないほどの本数あった。柏のGKキム・スンギュが好セーブを見せなければ、たちまち逆転に成功していたはず。しかし「チャンスをたくさん作ったが勝ちきれなかった。十分ではなかった」(アンジェ・ポステコグルー監督)。決定機を得点という形に結び付けられず、2年ぶりのファイナル進出はならなかった。

 わずか10日前にもリーグ戦で対戦した柏は横浜FMをリスペクトし、勝つための最善策を練ってきた。勝者を率いたネルシーニョ監督は「狙いはカウンターだった。相手はポゼッションに長けているクオリティーの高いチームだったが、ボールを奪った時にできる相手の背後のスペースを狙っていった」と涼しげに語る。あくまでも現実的に戦い、それを見事に遂行できる柏らしいゲーム運びだった。

 それでも敗れた横浜FMのパフォーマンスが色褪せることはないだろう。今季はかつてない過密日程と負傷者続出に苦しむなかで、最近はシステム変更とともに戦略の幅を広げている。結果とは別次元のところでチームとして文脈を持ちながら、積み上げてきていることを感じさせる内容だった。

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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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