赤崎秀平、”狙撃手”襲名きっかけの「低空ドライブシュート」 名手相手に磨いた必殺技

名古屋グランパス時代のFW赤崎秀平【写真:Getty Images】
名古屋グランパス時代のFW赤崎秀平【写真:Getty Images】

【J番記者が選ぶスーパーゴール|名古屋編】2019年J1第2節C大阪戦(後半47分)…赤崎の低空ドライブ弾

 過去、名古屋グランパスには硬軟取り合わせて素晴らしい“シューター”たちが歴代にわたって所属してきた。ストイコビッチ、ウェズレイ、ヴァスティッチ、中村直志、藤本淳吾、小川佳純……。思い返せば枚挙に暇がない。現在のチームにもマテウスや相馬勇紀など質の高いシューターはいるが、ここ最近で見た中ではFW赤崎秀平(現ベガルタ仙台)のシュートは質が違ったことをよく憶えている。そして、彼が名古屋の“狙撃手”として愛されるきっかけになった得点も――。

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 2019年3月2日、J1リーグ第2節のセレッソ大阪戦(2-0)で赤崎は途中出場から2点を挙げ、勝利の立役者となった。22分間のプレータイムで2ゴールという記録だけでも価値は高いが、とりわけ2点目のシュートはまさしく超絶技巧の一撃だった。

 後半ロスタイム、右サイドでこぼれ球を拾うと周囲の状況を瞬時に把握し、得意の右足を強振すると、ボールは胸から腰ほどの高さで縦にドライブし、逆サイドのネットに突き刺さった。よくあるドライブシュートは無回転なり縦回転で高い位置から落ちてくるが、赤崎のそれは低い弾道で変化するから驚異的だ。相手の名手・韓国代表GKキム・ジンヒョンも、そこまで至近距離でもない位置からのシュートが自分の近くで弾むのを、見送るしかなかった。

 さらに驚くべきなのは、赤崎がこの変化を制御していることにある。筑波大学から鹿島アントラーズ、ガンバ大阪、川崎フロンターレを経て名古屋にやってきた点取り屋だが、その過程で出会ったトップクラスの守護神たちからゴールを奪うため、総合的な意味でのシュート力向上に取り組み続けてきた。

「以前はインサイドで狙っていたんですが、ソガさん(曽ヶ端準)やヒガシくん(東口順昭)が相手だと入らない。だからインステップでどれだけコントロールできるかと練習して、自分のシュートを変えてきました」

 ものにしたのはここ3年ほどの間で、「もともとナチュラルで無回転気味に打つことはできていたんですけど、それを自分でコントロールしようと練習したら、ああいうボールの方がコントロールしやすくなった。狙ってなくても落ちるようになってきているぐらい」ともはや自由自在だという。セレッソ戦で見せた“低空ドライブシュート”は、強シュートとコントロールシュートを両立させていく中で、自然と会得した彼の必殺技だったのである。

 左右両足を操り、ヘディングシュートも得意でダイレクトプレーもめっぽう上手い赤崎はゴールパターンも豊富。この年はカップ戦でもコンスタントに得点を挙げ、リーグ5点、カップ4点の計9ゴールを挙げてチームに貢献した。決勝点や勝ち点を拾うゴールも多く、その得点数以上にチームを救った彼だが、やはりパロマ瑞穂デビュー戦で見せたスーパーゴールのインパクトの方が自分には強い。いま見返してもあの弾道はとんでもないと思う。

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今井雄一朗

いまい・ゆういちろう/1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。Jリーグの名古屋グランパスや愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする。現在はタグマ!にて『赤鯱新報』(名古屋グランパス応援メディア)を運営し、”現場発”の情報を元にしたコンテンツを届けている。

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