ドイツ3部日本人アナリストの挑戦 最難関プロライセンス取得へ、来季狙うチーム内“昇格”

日本人アナリスト浜野裕樹が分析をする様子【写真:本人提供】
日本人アナリスト浜野裕樹が分析をする様子【写真:本人提供】

【日本人アナリスト浜野裕樹の奮闘|第2回】狭き門のドイツS級ライセンス、2000年代以降の日本人合格者はゼロ

 海外に出て、指導者のプロとしての道を目指す若者は増えてきている。僕が暮らすドイツにもUEFAプロレベルとなるプロコーチライセンスを取ろうとやってくるが、それは非常に困難な道なのだ。

 いわゆるドイツのS級ライセンスを所得している日本人は過去に存在する。だが2000年初頭の育成改革後に、このライセンスを獲得した人はまだ1人もいない。それはプロコーチライセンスを受講するための条件が厳しくなったことが大きな理由になる。A級ライセンスまで合格できたとしても、誰でも挑戦できるわけではない。

■U-17、U-19の1部リーグに当たるユースブンデスリーガで監督を1年以上する
■3部以上のリーグでアシスタントコーチを1年以上行う
■体育大学を卒業している
■タレント育成センターで責任者として働く
■地区トレセンで専任指導者として働く

 日本人だけではなく、ドイツで指導者として上を目指すものがみんなここのポストを狙っているのだ。筆者も09年にA級ライセンス試験を突破しているが、それから10年以上チャンスはずっと遠く向こうにあるまま。非常に狭き門なのだ。

 それでも、ビクトリアケルンでアナリストとして活動している浜野裕樹は、そこへの挑戦を見据え、その可能性を高めるための道筋を探し続けている。他クラブ下部組織の監督オファーもあったが、このプロコーチライセンス条件を満たすために、ビクトリアケルンへアナリストとして入ることを決断した。

「僕にとってはU-17、U-19のユースブンデスリーガ監督が一番イメージできるポスト」ということを伝えると、浜野は微笑んだ。

「それは面白いですね。みんな『ここを突こう』みたいなのがあるじゃないですか。俺はシュトゥッツプンクト(日本でいうトレセン)から行こうかな、とも思ったりもしました。僕の場合は『体育大学を卒業している』というのでも行けるんですけど、実際のところ体育大学卒業、タレント育成センター責任者、シュトゥッツプンクト責任者の人は、あんまりいないという印象があって」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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