柏レイソル、“J1昇格即優勝”の再現なるか 4発快勝の復帰戦に潜んだ危うさと名将の知略
【識者コラム】札幌との派手な撃ち合いとなった開幕戦、自慢の攻撃力は見せつけたが…
J1リーグ開幕戦で柏レイソルが快勝した。アウェーの北海道コンサドーレ札幌も超攻撃志向のチームなので、序盤から派手な攻め合いを展開し続けた一戦だったが、後半20分までに柏が4-0と一方的に突き放し雌雄を決した。
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過去に3度のJ2降格を経験した柏だが、いずれも1シーズンで復帰。特に同じくネルシーニョ体制で復帰を果たした2011年は、J1でも昇格即優勝の快挙を成し遂げた。
だが、昨年のルヴァンカップのファイナリストを4-2で下したJ1復帰戦は、自慢の攻撃力を見せつけながらも、反面危うさもちらつかせた。
「相手のビルドアップを封じるためにも高い位置からの守備を続ける」
ネルシーニョ監督が掲げる戦術は奏功した部分もあったが、同時にリスクも背負った。札幌の左サイドはボランチの宮澤裕樹と、3バック左の福森晃斗がカバーに入ることで、常に菅大輝がウイングのように高い位置に張り出したため、再三フリーでクロスを上げることになったし、右サイドでも白井康介や代わって入ったルーカス・フェルナンデスが1対1で仕掛けて、確実に優位に立っていた。逆に札幌がリスクを冒して攻撃的に出てきた分だけ、柏はオルンガを攻め残らせて常にカウンターのターゲットにする戦略が見事にはまった。
むしろ柏にとっては、札幌が独自のスタイルに固執し、相手の対策に淡泊だからこその好結果だったという見方もできる。それは昨年J2のアルビレックス新潟戦と比べても落差は顕著で、新潟はしっかりとオルンガの使えるスペースを消したため、ほとんどボールにも触らせていない。ところがこの日の札幌は、まったく対応ができないキム・ミンテを下げたのが残り11分。おかげで後半途中からずっと足がつって、まともに走れない進藤亮佑が最後までピッチに残るなど、完全に采配が後手に回った。
札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、「チャンスは作るのに、こちらのミスもあり相手が得点を決めて思い通りにいかない展開となった」と振り返る。だが柏のネルシーニョ監督にすれば、「高い位置からの守備が効いたのはプラン通りだったので、もう少し点が取れても良かった」とコメントした。実際どちらの言葉にも嘘はなく、柏は得点以外にも決定機が最低8回、札幌にも3回はあった。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。