長友佑都をセリエAへと導いたイタリア人監督が語る日本人が世界で通用するための条件とは

長友があいさつの次に覚えた「migliorare」という言葉

 

――彼は監督と知り合ったころ、「migliorare(イタリア語で改善する、良くなるの意)」と連呼し続けたそうですね。
「そうですね、それこそ頻繁に言っていました。彼があいさつの次に覚えた単語がその言葉だった。口にするだけではなくて、常に自分の内側にそれを秘めていたということが一番重要だったと思います」
――逆に、ここはもっと成長しなければ、ステップアップできないと感じた部分はありましたか?
「彼は、難しいイタリアのサッカーをしっかりと学ぼうという姿勢を示し続けていました。それはすごく大切なことでした。ただ、謙虚さを持っていた一方で、選手として完成するまでにはやるべきことがたくさんありました。特に戦術面では、学ばなければいけないことが数多くありました。少し時間はかかりましたが、謙虚な姿勢で挑んでいたからこそ、彼は課題を乗り越えられたのだと思います」
――彼との会話で何か印象に残っていることはありますか?
「何か一つというよりも、日本やサッカーのこと、それこそ多岐にわたっていろんな話をしました。長友がイタリアに来た当初、私が日本を深く知っていたことは、彼にとっては大きなアドバンテージになったのではないかと思います(笑)」
――日本人は主張することが苦手な国民だと言われていますが、長友選手はどうでしたか?
「日本人選手同士であれば、もしかしたら自分の意見を主張することは難しかったのかもしれない。だが、イタリアでの彼はそうではなかった。外国に来て、全く異なる環境の中で、違う国の人たちの輪にも積極的に入っていった。そういう意味では、自分の意見を主張しやすい環境だったのかもしれません。サッカーに限らず自分の意見をハッキリと言うことは、リスペクトを伴った上での討論なので、非常に重要なことだと思っています」
――日本にいたときは守備の能力を評価されていましたが、今はゴールも増えてきています。そういった攻撃の部分はイタリアで飛躍したのでしょうか。
「イタリアでは5人で守ることが多いため、サイドの選手は前線に駆け上がる回数が必然的に多くなります。そういった部分も攻撃面の飛躍につながったのかもしれません。一人の選手として完成させるという意味では、攻撃面が良くなったということは大きな転機になったと思います」
――以前は無鉄砲にオーバーラップする印象もありました。彼に与えた戦術的なアドバイスは、どういう点に重きを置いていたのでしょう。
「出会ったころの彼は、確かに戦術面での成長が必要でした。長友が学んだ一番重要なことはタイミングだと思う。なぜならば、サッカーにおいて重要なのはタイミングだからです。タイミングさえ学べば無駄にたくさん走る必要がなくなります。いつ前に出るのか、いつ残るのか、サッカーはタイミングで成り立っていると言っても過言ではありません。彼はそのことを学んだと言えます」
――数メートル単位のポジショニングの調整や、そのタイミングも手取り足とり教えたのですか?
「サッカーにおいて、1メートルというのは非常に重要な距離。ゴールにつながる重大なスペースを生むことにもなりますし、間違ったポジショニングから失点するということも起こり得ます。そういう意味では、先程のタイミングの話ではないですが、いつ前に走り込むのか、いつカバーするのかをしっかりと教え込みました」

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