長友佑都をセリエAへと導いたイタリア人監督が語る日本人が世界で通用するための条件とは

日本人選手が世界で活躍する条件とは

――数年前まで大学生だった彼が、プロになって3年足らずでイタリアへと渡り、ビッグクラブでプレーしていることをどう思いますか?
「私と知り合えたというのが幸運だったのではないでしょうか(笑)。それは冗談ですが、私がFC東京を知らなくて彼のことを視察に訪れなければ、今のようなキャリアはなかったかもしれません。それも彼が持ち合わせた運だと思います」
――日本人選手が世界に通じるために必要な要素とは何でしょうか。
「個人の技術などの前に、欧州で成功する上で一番大事なのがメンタリティーです。特にイタリアは、ティフォージやメディアの人間を含め、環境自体が日本よりも非常にアグレッシブです。そういった環境に適応できるだけの戦う強い気持ちがベースになければ、成功は困難になるでしょう。その上で個人戦術の部分、イタリアのサッカーにおいては試合の中で何度も戦術的な変化が起こり得るので、戦況に応じて対応する力が求められます。ただし、繰り返しになりますが、一番大事なのは強いハート。非常に厳しい環境にも適応できるメンタリティーを準備しておかなければ欧州での成功は難しいでしょう。私も実際に日本に来てみて、技術的には高い能力を持っていると思いますが、正直メンタル的な準備ができているかは、まだ分からないところがあります」
――では、具体的に今後、欧州で成功を収める可能性のある選手の名を挙げることは難しいですか?
「それは難しいですね。Jリーグは技術的な観点から言うと非常に素晴らしいリーグだと思います。ですが、フィジカルの面、戦術面、そして、何よりもメンタルの面できちんとした準備ができていなければ欧州で成功を収めることは難しい。成功するためにはオープンで、かつ強靱な精神が重要になってきますから」
――現在は長友選手を発見する仕事から第二、第三の長友を育てる立場に変わりました。その仕事にやりがいを感じていますか?
「まずFC東京というチームで、しっかりとした仕事をしたいと思っています。現時点でも多くの若い選手を起用してきましたが、チームレベルで良い仕事をすることが先決です。その上で将来的に何人かを欧州に連れて行って成功させるということができれば、それはうれしい成果だと思います。ただ、まずは良いチームをつくることに尽きます。本当にまだ進むべき道は長いと感じていますが、しっかりと忍耐強くやっていく必要があります。ここで私がやるべきことはたくさんありますからね」
――日本で長友、長友と言われてうんざりすることはありませんか?
「いいえ、全くそんなことは感じていません。長友は既にFC東京の歴史の一部だと言ってもいいでしょう。そして、彼は現在インテルで活躍し、キャプテンを任される存在にまで成長した。それは日本サッカーにとっても素晴らしい成果だと思っています。こうして話を聞かれることは当然だと思っていますよ(笑)」
◆マッシモ・フィッカデンティ 1967年11月6日、イタリア生まれ。現役時代はトリノなど、イタリア・セリエAやセリエBでMFとして活躍。現役引退後、レッジーナなどの監督を歴任し、2010年にセリエAのACチェゼーナでその手腕を発揮。移籍初年度の長友を指導した。今季からJリーグ初となるイタリア人国籍の監督としてFC東京の指揮を執る。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

 

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