伝統の“静学スタイル”と5戦無失点の堅守 「守りのチームではない」に滲む24年ぶりVへの覚悟

静岡学園、終了間際のPKのシーン【写真:Noriko NAGANO】
静岡学園、終了間際のPKのシーン【写真:Noriko NAGANO】

矢板中央に苦戦も…劇的PK弾で24年ぶりの選手権決勝進出

 第98回全国高校サッカー選手権は11日、埼玉スタジアムで準決勝2試合が行われ、静岡学園(静岡)が矢板中央(栃木)を1-0で下し、13日の決勝で連覇を目指す青森山田(青森)と対戦することになった。静岡学園の決勝進出は鹿児島実(鹿児島)と優勝を分け合った第74回大会以来、24年ぶり3度目。矢板中央は3度目の4強に進んだが、初の決勝進出はまたしても果たせなかった。

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 攻めても打っても、自陣に人手を割いてゴール前を固める矢板中央から得点を奪えない。まるで大坂城のような堅牢。静岡学園は90分のうち大半の時間で主導権を握り、前半に9本、後半だけで15本のシュートを放って総攻撃を仕掛けた。しかし0-0のまま、変化のないまま時間ばかりが経過する。攻め疲れた静岡学園、守りのリズムが完全に染み付いた矢板中央という構図で時が流れる。

 ゴール前の攻防が多く、あっという間に後半も45分が過ぎ、とうとう3分のアディショナルタイムに突入した。延長戦を実施するのは決勝だけとあり、選手もベンチも観客もPK戦を予想したはずだ。

 追加タイムの3分が終わろうとしていた、その時だった。静岡学園の大黒柱、J1リーグ鹿島アントラーズへ加入するMF松村優太が、ペナルティーエリア内へリズミカルに運ぶと、相手DFに倒された。土壇場でのPK獲得。松村が自らボールをセットし、「冷静になれず、我慢できなくて少し早く跳んでしまった」と言う矢板中央GK藤井陽登の逆を突いた決勝弾が、ゴール右に沈んでいった。

 東京・国立競技場での決勝で鹿児島実と対決し、2-2で決着がつかずに両校優勝となった1995年度の第74回大会以来、24年ぶりの決勝進出が決まった。静岡県勢としても、藤枝東が準優勝した第86回大会以来12年ぶりとなる。

 OBである川口修監督は、「相手の守りにスキがなく、ゴールをこじ開けられなかった。ドリブル、ミドルシュート、セットプレーなどいろいろ試してみたが、苦しい試合だった」と言ってひと息つき、1-0の勝利に安堵感を漂わせた。

 チームは1回戦から準決勝までの5試合で無失点の堅陣を持続中。県大会も決勝トーナメントの4試合で1点しか奪われていない。静岡学園と言うと個人技の高い選手を多数抱え、ドリブルを武器にした攻撃型のチームという印象がとても強い。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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