“便利屋”ではなく“アンカー”で勝負 遠藤航、ドイツで追求する「理想の6番像」
シュツットガルトで高まる存在感、リーグ戦直近5試合でフル出場
ブンデスリーガ2部の前半戦を3位で終えたシュツットガルトで、日本代表MF遠藤航の存在感は日に日に増してきている。
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11月24日の第14節カールスルーエ(3-0)とのダービーマッチで移籍後初スタメンを飾ると、そこから5試合連続フル出場。攻守の鍵となるアンカーの位置で欠かせない戦力となってきているわけだが、移籍してきた当初はどこで起用されるかも不透明なままだった。
「どこでもできる選手」というのは、一つの評価だ。しかし選手にはもちろん、それぞれに思い入れのあるポジションがある。9月の第5節ボーフム戦(2-1)後に話を聞いた時には、どこでも行ける準備をしながら、「やっぱりプレーしたいのはナンバー6のアンカーのところなんで、そこでトライしたいなっていう思いはあります」と心境を明かしていた。自分にできることはなんでもやるけど、自分の思いもしっかりとアピールしていく。それが目に留まり、指揮官から必要とされるその時がくるまで――。
「練習の中でもナンバー6(アンカー)でプレーしたいっていう話を、監督に直接言っているわけではないですけど、コーチに言ったりとか。そのあたりの話はしていたし、どっちかというとコーチの人が自分に対して声をかけてくれたりしていて、いろいろ話をしていたので。それで練習でも6番で使われるようになってから、出られたって感じですね」
12月9日の第16節ニュルンベルク戦(3-1)後に、そう話していた。
当時のチームはなかなか安定感が生まれない状況だっただけに、攻守に的確なプレーを見せる遠藤のプレーが持つ意味はどんどん大きくなっている。守備では相手の攻撃の起点を潰し、攻撃ではチャンスを生み出すための動きを模索していく。ただパスを散らすだけではなく、勇敢に縦パスを狙い、攻撃のスイッチを入れる役割を積極的に担おうとしているのだ。
それが裏目に出てしまうこともある。2019年最終戦のハノーファー戦(2-2)では、自陣でボールを失い、そこから失点につながったりもした。
「そうですね、僕がミスして失点になりましたけど。ただ、他(の選手のところ)でも何回かミスから失点になりそうな場面があったんで、やっぱり前から(プレスに)来た相手に対してどうポジションを取って、どうボールを動かしていくかというところは課題なのかなと。でも自分としては、今日は(ボールを)失って失点になりましたけど、ああいうプレッシャーがあるなかでボールを受けながらさばいていかないと、プレッシャーをはがせないのかなと思うので。あそこはビビらずに、これからもチャレンジし続けていければと思います」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。