「人生最高のゴール」と“データマン”の思惑 高校総体準Vの富山第一、劇的弾導いた要因

PK戦の末、立正大淞南に勝利した富山第一の選手たち(※写真は入場行進の時のものです)【写真:Football ZONE web】
PK戦の末、立正大淞南に勝利した富山第一の選手たち(※写真は入場行進の時のものです)【写真:Football ZONE web】

苦しみながらも終盤に追いつき、PK戦で立正大淞南を破る

 第98回全国高校サッカー選手権は12月31日、1回戦が各地で行われ浦和駒場スタジアムでの富山第一(富山)と立正大淞南(島根)の一戦は、2-2と80分(前後半40分)で決着がつかずPK戦に突入。PKスコア4-3で、今夏インターハイ準優勝の富山第一が立正大淞南を倒した。

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 常に先手を取ったのは立正大淞南で、前半32分に左FKからのオウンゴールで先制し、1-1の後半27分にはゴール前のこぼれ球に出足良く先んじたFW伴木翔が勝ち越し点を挙げた。

しかし6大会前、富山県勢として第92回大会で初優勝を遂げた富山第一は土壇場の後半38分、この1分前に途中出場したDF浦崎廉の絶妙な右クロスを遠いポストで待ち受けたFW碓井聖生が、うっとりするような美しい右足ボレーシュートをゴール右隅に蹴り込み、試合を振り出しに戻したのだ。

 富山第一はシュート数では17対6と立正大淞南を圧倒し、被決定機は失点を除くと2度、与えたCKも1本だけだった。

 ところが、この日は決定力を欠いた。FW吉倉昇空は前半34分と35分に立て続けに絶好のシュートを外し、碓井は同点弾の30秒前に絶好球となった右クロスからのヘディングシュートを決められず、後半アディショナルタイムにはDF丸山以祐のFKがクロスバーに弾かれ、こぼれ球を拾った浦崎の一撃も簡単に決められるはずが右へ逸れた。

 就任2年目で同校を高校日本一に導いた8年目の大塚一朗監督は、「先制してリズムをつかむのがウチのパターンで、そういう試合運びをしたかったのですが、チャンスを作ってもなかなか点が取れませんでした」と、ずっと口元を緩めながら穏やかな口調で試合を振り返った。

 そんな会話の最中、記者から「でも碓井くんのゴールは凄かったですね」と水を向けられると、一層相好を崩し「点を取れないセンターフォワードと揶揄してきたんですよ」と笑った。

 PK戦の3番手に登場したその碓井は、バーのはるか上を越える“場外ホームラン”をぶっ放した。「監督から思い切り蹴ってこい、と言われて力んでしまいました」と苦笑すると、「人生の中で最高のゴール。ヘッドは苦手ですが、ボレーシュートは一番得意なんです」と同点弾を自賛した。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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