南米で戦う元Jリーガー、日本の“育成”評価も課題指摘 「今の子は冷めている感じがする」

南米で戦う元Jリーガー澤昌克【写真提供:ウニオン・ウアラル】
南米で戦う元Jリーガー澤昌克【写真提供:ウニオン・ウアラル】

【インタビュー】元柏の澤昌克、日本とペルー両国の若手育成の現状を比較

 かつてJリーグの柏レイソルでプレーしたMF澤昌克は現在、ペルー2部のウニオン・ウアラルに所属している。ペルーで9年、日本でも柏で6年、プロとしてプレー経験のある36歳のベテランは、日本、ペルー両国の若手選手の育成についてどのように感じているのか。ペルーを訪れて話を訊き、両国を比較してもらった。

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――ペルーでは現在、どのような育成方法で若手を育てているのでしょうか?

「ペルーには2008年から、若手に試合経験を積ませ、育てるためのルールが設けられています。1部リーグでは各チーム20歳以下の選手を1年間で計4000分以上、2部リーグでは計2000分以上、試合に出場させなければなりません。さらに2部リーグでは25歳以下の選手が常にピッチに4人以上いなければならないというルールもあります。

 これが守られなかった場合は勝ち点が剥奪されるルールになっており、各チームの監督はベンチ入りのメンバーも含め、怪我のケースなどあらゆる可能性を想定したうえで交代のカードを切らなければなりません。ただ、実際には熱くなってルールを忘れてしまい、若手に代えてベテランを投入し、ピッチ上の25歳以下の選手が3人になってしまい、勝ったにもかかわらず勝ち点を剥奪されてしまう例も珍しくないですね」

――若手にとってはこのルールがあることで、出場機会が増えるわけですね。

「はい。このルールがあることで、若手は実戦の機会を得られますし、1部のチームに所属する若手がレンタルで2部のチームに移籍して実戦を積むケースも多いです。でも、中には21歳、あるいは26歳になった途端、試合で使われなくなる選手もいるんです。それまで実力でレギュラーをつかんだと思っていた選手が、若手起用ルールのお陰で試合に出してもらっていただけなんだという現実を知り、失敗したレッテルを貼られて自信をなくしてしまい、見捨てられて1部→2部→アマチュアと落ちていく。

 ギラギラ感がなくなり、緊張感なく、のほほんとプレーするようになり、数年後には消えていくケースも少なくないんです。それなら、このルールなしに実力でレギュラーを勝ち取って試合に出たほうが、先のある選手が生まれてくると思うんですよね」

――つまり、デメリットになっている側面もあるわけですね

「このルールは若手を育てるために設けられたルールですが、逆に弊害になってしまっている部分もある。実際、今のペルー代表のメンバーを見ても、ロシア・ワールドカップ(W杯)に出た世代の次の世代が出てきておらず、W杯後も代表に選ばれる選手があまり変わっていない。メンバーはここ4、5年、変わっていないんじゃないかな。

 でも、もうエースのFW(パオロ・)ゲレーロも若くないし、若手が出てきていないということは、このルールがフィットしていないんじゃないかなと思うんです。実力で試合に出ている選手ももちろんいますが、それは1割くらいで、残りの9割はルールがあるから使われているだけ。他の国だと、少しずつ出場機会、出場時間が増えて自信も付いていく。だから、僕はこのルールは必要ないんじゃないかと思っています」

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