南野拓実、CL“初舞台”で別格の輝き 華麗な2アシストと隠れた「ファインプレー」

素晴らしかったのは2アシストだけではない

 躍動感のあるプレーが続く。チーム2点目の起点を作ったのも南野だ。

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 前半34分、自陣深いところでパスをもらうと、相手の守備が整っていないのを認識して素早くロングボールを敵陣へ。強引にボールを収めた韓国代表FWファン・ヒチャンからのパスを受けたホランドが、2点目となるゴールを決めた。その後も南野は、必死にボールを奪いに来ようとする相手の狙いをことごとく外し、チームの攻撃のリズムを作り出していく。

 そして、ザルツブルクの5点目となるゴールは、1人で“総合演出”。前半アディショナルタイム2分、自陣ペナルティーエリアすぐ外でクリアボールを受けた南野は、後ろからチェックに来る相手選手を鋭いターンで外すと、そこからピッチをどんどん駆け上がる。必死に追いすがる相手のスライディングタックルを受けても持ちこたえ、そのままドリブルで持ち運んでいく。ゴール前の様子を見極めたあとに左足で送られたクロスは、スピードも、タイミングも、コースも、高さもすべてが最適なもの。ハンガリー代表MFソボスライ・ドミニクのゴールをアシストすると、駆け寄ってくる仲間を最高の笑顔で迎え入れ、抱き合って何度も何度も喜び合った。

「2つのアシストとも自分の長所を上手く出せたので良かった」と本人が語るように、どちらも素晴らしいプレーだったのは間違いない。だが、素晴らしかったのはこれだけではない。守備の戦術理解、味方のパスを引き出すポジショニング。受けてからの状況判断――そのどれもが高いレベルにあった。

 チームの攻撃が上手くいっていない時、攻撃的な選手は盛んにスペースでパスを要求するジェスチャーを見せることがある。だが狭いスペースに顔を出して必死にアピールすればするほど、相手からは狙われてしまう。

 確かにこの日は、ヘンクの守備がとても消極的で、出足が遅かったこともあり、スペースが普段以上にあった。それでも味方の出したいところにスッと顔を出し、相手が寄せてきたら守りにくいところへパスを展開していく南野の動きは、とても効果的だった。

中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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