【ベスト4決定】 メッシが見せた“オフ・ザ・ボール”のチャンスメイク

 

ベルギーのスピードとパワーの脅威にうまく対応

 

 ベルギーのようなカウンターを中心とするチームは、基本的な戦い方をあまり変えない。相手の戦い方に応じて守備のオーガナイズを微調整するだけだ。だが、失点してしまった場合のプランをどうするのかという課題が一方である。後半10分ごろに、2点目をセットプレーで決めにきたアルゼンチンのCKをキャッチしたGKクルトワが好判断からのカウンターでチャンスを作りかけたが、その直後にボールを失い、逆にカウンターからFWイグアインにポスト直撃のシュートを打たれ、ピンチをまねいてしまった。

 ベルギーはトランジションの応酬で後手に回ってしまい、交代で流れを変えにきた。後半15分ごろからFWルカク、MFメルティンスを投入。左右のクロス、そのこぼれ球を拾って相手を押し込むためのスイッチを入れてきた。しかし、この日のアルゼンチンは今大会中に得た自信と経験を生かし、落ち着いて対応した。

 ベルギーにとって誤算だったのは、攻撃のキーマンであるMFアザール、MFデ・ブライネといったテクニックに優れたチャンスメーカーが中盤でアルゼンチンのボランチを務めるマスチェラーノとビリヤに抑え込まれてしまったことだ。サイドからボールを放り込むことはできても、中央から変化をつけることができない。マスチェラーノの潰しどころを見極める読みや1対1の対応のうまさはもちろんだが、ビリヤの広い範囲をカバーする運動量はベルギーにとって脅威となっていた。

 終盤、ベルギーはCBファンブイテンもゴール前に残り、パワープレーを試みる。アルゼンチンはFWイグアインに変えて守備的MFガゴを入れ、マスチェラーノをアンカーに配置してDFラインのカバーにまわした。最後までDFラインは集中を切らさず、ぎりぎりまでラインをコントロールしながらボールを跳ね返し続け、カウンターからメッシを活用したチャンスに繋げてゴールを狙った。

 体格差という物理的な優位性を使って攻撃を仕掛けたベルギーは最後までゴールを狙ったが、アルゼンチンが冷静に凌ぎ切った。ほぼプラン通りに試合を進めることができたサベーラ監督にとって、この試合は会心の勝利だった。

取材・文=鈴木達朗  企画/COACH UNITED編集部

※ワールドカップ期間中、記事内で扱うシーンの一部はFIFAワールドカップ公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』のマルチアングル動画、選手毎のスタッツデータで確認できます。
詳しくは、「LEGENDS STADIUM 2014 – FIFAワールドカップ公式動画」まで

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