リバプールに“神風”は再び吹く 時を超え「アンフィールドの魔物」が起こす奇跡

大逆転勝利に歓喜するクロップ監督【写真:Getty Images】
大逆転勝利に歓喜するクロップ監督【写真:Getty Images】

「我々は鬼っ子なんだ」 大学教授が語る“リバプール人”の気質

 そのきっかけとなったのが、前半7分に決まったディボック・オリギの先制ゴールだった。しかし、リバプールの注文通りに早い時間帯で1点を奪われたといっても、冷静に考えれば全く焦らなくて良い状況だった。

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 ところがバルセロナは浮き足立った。そしてトレーニング場では鬼になるクロップに、4年間鍛えられたチームと全力で駆けっこをして体力を消耗し、後半に2点目、3点目、4点目を奪われ、本当に1点が必要な状況になった時、体が動かなくなってしまっていた。

 これこそ、やはりアンフィールドのすべてがリバプールに加勢するという電撃的な空気のなせる業だろう。そしてそんな特殊な雰囲気をアンフィールドに張り巡らせるリバプールっ子には、イングランドの中で特異とも言える気質がある。

 10年ほど前に、リバプール大学でフットボール史について教鞭を振るっていたローガン・テイラー教授にインタビューした。この狂信的なリバプール・サポーターであり、当時はヘビースモーカーだった痩身の老教授は、「我々は鬼っ子なんだ」と言った。

 イングランドの地方都市でありながら、北西部に位置する港湾都市という地理的な条件があり、イングランドに敵意の強いアイルランド人やウェールズ人、スコットランド人が多く流れ込んだ。そのおかげでリバプールは「彼らのケルト文化、気質に大きく影響された」と教授は語った。

 だから、政治的感覚に優れ、論理的なイングリッシュの中にいて、こちこちの石頭で融通がきかないリバプール人の非常に感情的で頑固な性格が生まれた。そのうえ身内の仲間意識、連帯感は非常に強く、排他的でもあり、イングランドの中で孤立した存在になった。こうしたある種、一途で直線的な気質も手伝って、リバプール・サポーターの応援に異常なほどの熱を与え、アンフィールドを特別な場所にするのではないだろうか。

 試合終了のホイッスルが鳴り響いた瞬間、後半に出場して2点を奪った大ヒーローのジョルジニオ・ワイナルドゥムは膝を崩し、顔を覆って人目をはばからずに号泣した。

 しかし、思い余って泣いていたのはワイナルドゥムだけではない。コーナーキックの場面での天才的な閃きで、勝負を決める4点目をアシストしたトレント・アレクサンダー=アーノルドも、ベテランのジェームズ・ミルナーも、痛み止めの注射を打って後半に臨んだ主将ジョーダン・ヘンダーソンも、みんな頬を涙で濡らしていた。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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