リバプールに“神風”は再び吹く 時を超え「アンフィールドの魔物」が起こす奇跡

試合前には大勢のサポーターがスタジアムを取り巻いていた【写真:AP】
試合前には大勢のサポーターがスタジアムを取り巻いていた【写真:AP】

クロップが証言、クラブに関わるすべての人の想いが“サッカーの質”を高める

 Atmosphereは「雰囲気」と訳せるが、ここではリバプールというクラブがまとっている、もっと「濃厚で熱い空気感」を表す言葉である。

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 その濃厚な空気はEmotion(感情)とDesire(欲求)が生み出す。監督、選手、コーチ陣、スタッフ、経営陣、それにファン全員が加わり、それこそ一丸となってリバプールを愛する強い“感情”と、その愛するチームの勝利を心底強く願う“欲求”。それが最後にクロップが付け加えたFootball Quality、“サッカーの質”を高めるのだ。

 試合当日、キックオフ2時間前にアンフィールドに着くと、すでに大勢のサポーターがスタジアムを取り巻き、大声でチャントを唱えていた。そして赤い発煙筒を焚き、文字通りアンフィールドを赤く染めていた。

 試合開始1時間半前。その赤い煙幕の中を、“WE ARE LIVERPOOL THIS MEANS MORE”(我々はリバプール、その意味は単なるフットボールクラブ以上のもの)というスローガンが、車体の横に大きく刷り込まれたバスが選手とコーチ陣を乗せて到着する。

 もうすでにサポーターたちは声を枯らせている。しかし彼らは、そんなことはお構いなしだ。これから自分たちが何よりも大切だと思い、愛するクラブのために死力を尽くそうとしている選手たちのことを思えば、自分の声帯がぶっ壊れたところで大したことはない。力の限り声を振り絞り、「リバプール」と連呼する。

 そして試合開始直前のスタジアム。アンセム『You’ll Never Walk Alone』のゆったりとしたレコードが響き渡ると、場内に“祈り”が充満した。

 今夜のこの試合の勝敗がどうであれ、「君が一人で歩むことはない」と連帯を呼びかける歌を、5万4000人の大観衆が奇跡を願う張り裂けそうな心とともに歌い上げた。その雰囲気たるや、まさしく空中に電流がほとばしるかのように電撃的だった。ここにいるリバプール・サポーター全員の気持ちが、本当に「この試合に勝って決勝に行く」というたった一つの望みに昇華していた。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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