【W杯詳細分析・ブラジル-チリ】日本戦よりも明らかに激しかった南米同士の一戦 PK決着の激闘がエキサイティングでスピーディーだった理由 

 冒頭ではあえて分析の原稿としてはあまり使わない主観的な表現でこのゲームの印象を述べた。この試合に限らずグループリーグを突破したチームの多くはこうした内容のゲームを行っていたはずだ。今回はその激しくエキサイティングでスピーディーな試合の要因について分析してみたい。

 個人の技術は高いが規律や守備の組織面で課題が残るというのがこれまでの南米サッカーに対するイメージだった。また、サッカー王国ブラジルの南米での圧倒的な力に対抗するためにブラジル以外の他の国々はカウンターで対抗することが多かった。

 BRA v CHI@28June2014 (1553) のコピー

 この試合ではそれらの定説はまるでひっくり返されていた。ブラジル対チリの試合のデータを見てみよう。

 ポゼッション率はブラジルの48.4%に対してチリは51.6%、パスの成功率は72.9%:76.2%、シュート数は23本対13本、オープンからのクロス数は25本対9本、Duels(フィフティ・フィフティの状況にあるボールをどちらが奪ったかを示すデータ)はブラジルの99勝87敗(勝率53.2%)だった。

 技術が高ければパスの成功率が高く、ポゼッション率でも相手を上回るはずだが、この試合ではチリの方が上だった。しかし最後のゴールに直結するクロスの数やシュートの数ではブラジルが相手を圧倒した。この試合を表現する興味深いデータをイラストで表したものを見てみよう。

ぶらちりピッチ図

 これは試合中プレーがどのエリアで起きたかを示すデータとポゼッション率だ。それぞれのゴール前で30%近いプレーが行われ、中盤でのプレーは44%だけだ。過去の多くの試合を見てみるとそれぞれのゴール前でのプレーが20%ずつ、中盤でのプレーが60%というのがほぼ平均値だ。つまりそれぞれのゴールに向かう直線的なプレーの数が増え、やや中抜き(中盤で作るという作業を省略するという意味)の傾向が見て取れる。

 

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