日本代表は「正しい道」を歩んでいる 苦戦のサウジ戦で“個の集合体”が示した総合力
アジア杯は「総合力vsチーム力」 “輸入国”の中東勢や中国は着実に代表を強化
アジアカップは「総合力vsチーム力」の様相を呈している。
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参加24カ国の中では、日韓を中心にオーストラリア、イランなどが海外に選手を輸出しており、チームとして十分な強化期間を確保するのが難しい。特に日本は、サウジアラビア戦でスタメン出場したフィールドプレーヤー全員が欧州のクラブに所属しており、ロシア・ワールドカップ(W杯)後に森保一監督が世代交代を促したこともあり、最も即席の度合いの濃いチームとなった。
それに対して中東諸国と中国は完全な輸入国だ。代表選手のほぼ全員が自国でプレーし、逆に財力に任せて先進国から監督や助っ人選手たちを次々に輸入している。長期政権が滅多にないので継続性には疑問符がつくが、少なくとも吉田麻也の言葉を借りれば、サウジアラビアの場合は2代前のベルト・ファン・マルバイク監督時代から着実にポゼッションスタイルが研磨されているようだ。
概して代表チームだけの強化を考えるなら、中東スタイルは大きなメリットになる。W杯の歴史を振り返っても、2002年日韓大会に臨んだフィリップ・トルシエ監督時代の日本代表は、大半がJリーガーだったので五輪やユース年代も含めて海外遠征を繰り返すことが可能だった。また1978年に軍事政権下で大会を開催したアルゼンチンも、マリオ・ケンペス以外全員を国内にとどめ、リーグ戦より代表合宿を優先させる強硬策が功を奏し初戴冠した。
こうした背景を考えても、日本サッカーは今回のアジアカップで、さらに進化したステージに踏み出したという見方ができる。ロシアW杯は、直前の代表監督交代劇でドタバタ感が強まったが、ピッチ上ではアルベルト・ザッケローニ監督時代から熟成されたユニットが軸を成した。
それに対し今回は、バヒド・ハリルホジッチ監督時代にも攻撃の要として固定されてきた大迫勇也が大会初戦で負傷し、新体制では左サイドで重要なアクセントになっていた中島翔哉が大会直前に故障離脱した。ロシアW杯時のチームと比べれば、前線の崩しの部分で重要な役割を演じた香川真司と、10年近く攻守のつなぎ役を担ってきた長谷部誠がいなくなっている。そのうえ故障者続出で、急きょ、塩谷司と乾貴士を招集したが、さらに青山敏弘が離脱した。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。