韓国&豪州を死闘の末に連破! 若き日本代表がW杯半年後につかんだアジア杯制覇の栄冠

決勝オーストラリア戦、芸術ボレーを叩き込んだ李忠成【写真:Getty Images】
決勝オーストラリア戦、芸術ボレーを叩き込んだ李忠成【写真:Getty Images】

ザック采配が呼び込んだ、オーストラリア戦延長の李の決勝ボレー弾

 準決勝は宿命の日韓戦。互いに譲らず1-1から延長戦に突入する。日本は延長前半7分にPKを獲得し、本田のキックはGKに止められるが細貝萌が勢い良くフォローしてゴール。この後指揮官は、1トップの前田遼一を下げ伊野波を送り5バックで逃げ切りを図るが、韓国は195センチのFWキム・シンウクを入れてパワープレーに出る。結局土壇場で同点弾が生まれ、決着はPK戦に委ねられた。結局PK戦は韓国の3人が立て続けに外し、あっさりと日本が勝利するが、まだ新監督の試行錯誤は続いていたのかもしれない。また日本にとって痛恨だったのは、韓国戦後の香川の負傷離脱だった。

 決勝戦でも日本は苦しんだ。前半は日本が嫌がるハイボールを直線的に供給してくるオーストラリアに劣勢が顕著。そこで後半11分、ザッケローニ監督が動いた。MF藤本淳吾を下げてセンターバック(CB)の岩政大樹を投入。CBだった今野泰幸を左サイドバックに回し、長友佑都をMFに上げた。

「システムを変えると守りに入ったと思われる。だからシステムはいじらずに、長友のスピードを生かして推進力を出そうと考えた」

 この采配が流れを変えた。再三長友からチャンスが生まれ、一方で空中戦に強いオーストラリアのFWティム・ケーヒルには岩政がしっかりと対応した。こうして延長後半4分、ゴール前でフリーになった交代出場の李忠成が、長友のクロスを美しいボレーで叩く――。

「若いチームだったが、若いから勝てないという理由はない。この大会はベンチのメンバーの力が大きく、李のゴールがそれを象徴していた」

 登録メンバーでピッチに立たなかったのは2人だけ。理想的な滑り出しを見せた新体制は、その後2年間ほどは見事な右肩上がりの成長を見せた。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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