“ブレた”柏に忍び寄る3度目の「J2降格危機」 剣が峰のラスト2戦で腹を括れるか
直面した王者川崎との一戦で加藤監督が手放したもの
劇的な下剋上の繰り返しは、Jリーグの特色でもある。昨年後半からすっかり沈み込んでいたガンバ大阪が、宮本恒靖監督を迎えるとともに連勝街道へと転じ、逆に今年前半を独走したサンフレッチェ広島がゴールを目前に突然黒星を重ねている。そして近年、J1制覇からJ2降格まで忙しく浮き沈みをしてきたという点では、柏レイソルも似た性質を持つ。
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前年4位、天皇杯もベスト4。着実にアカデミーから優秀な素材を引き上げ、一方で的確な補強をした今年は、むしろ上昇しか想像できなかった。ところが守護神の中村航輔、昨年の躍進を支えた手塚康平、守備の要になる中山雄太と故障者が相次ぎ、そのパートナーだった中谷進之介は夏に名古屋グランパスへ移籍。不測の事態が続き、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)が組み込まれた過密日程の影響もあり、スタートダッシュに失敗し監督が代わった。
ラスト4試合の時点で17位。もしJ2で、J1ライセンスを持たないFC町田ゼルビアが3位以下に終わり自動昇格が2チームとなれば、柏のクラブ史上3度目となる自動降格が決まる。
しかも直面したのは、王者川崎フロンターレとのアウェー戦。加藤望監督には、なんとか勝ち点1でも、という悪魔の声が聞こえたのだろうか。
結局、柏は“ブレた”。
加藤監督は、あくまで「後ろを3枚」と話したが、現実的には際立って低いゾーンでブロックを形成する5-4-1。左のワイドに起用された攻撃参加が持ち味の亀川諒史は、常に最終ライン近くで家長昭博との1対1の対応に追われ、ボランチの大谷秀和はパスの出しどころを探す間に小林悠にボールを奪われ、サイドに回った江坂任の持ち味は消えた。最前線に起用されたオルンガはボールを収められず、伊東純也は無理にでも単独突破を繰り返す。川崎のワンサイドゲームが3-0で閉幕すると、柏のサポーターが陣取るゴール裏スタンドからは「望、辞めてくれ」「今、辞めろ」などと辛辣な声が相次いだ。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。