横浜FMの攻撃を輝かせる「インナーラップ」 敵を惑わすサイドの連動性とは?

今季の横浜F・マリノスは、ビルドアップの時にサイドバックが内側へ入る形をよく使っている【写真:荒川祐史】
今季の横浜F・マリノスは、ビルドアップの時にサイドバックが内側へ入る形をよく使っている【写真:荒川祐史】

相手がマークを受け渡せない「インナーラップ」

 ボールホルダーの外側を回って追い越す「オーバーラップ」に対して、内側を追い越していく「インナーラップ」も古くからある攻撃の形である。横浜F・マリノスはインナーラップを効果的に使っている。

 外回りの追い越しは、ボールホルダーと対峙しているDFに、追い越していく攻撃側の選手が見える。通常、オーバーラップに対して守備側は、マークを縦方向に受け渡して対処する(図1参照)。ボールホルダーと対峙していたDFは追い越していく敵へのマークに切り替え、離したボールホルダーは追い越しをかけた相手をマークしていた選手が引き取る。

 ところが、インナーラップに対して守備側はマークの受け渡しをしない(図2参照)。ボールホルダーに対峙しているDFの背中側を敵が走っていくので、これを捕まえることは無理だからだ。従って、インナーラップに対しては初動のマークが遅れたら最後、追い越した攻撃側の選手はフリーになる。オーバーラップならば、初動で遅れても受け渡しでカバーできるが、インナーラップではそれができないわけだ。

[図1]オーバーラップ【図:著者提供】
[図1]オーバーラップ【図:著者提供】

 インナーラップでは、パスを受ける選手の視野がゴール方向にない。受けながらゴール方向へターンしなければならない難しさはある。ディフェンスラインも見られないので、タイミングがズレるとオフサイドにもなりやすい。ただ、ボールを受ける位置はより相手ゴールに近いフィールドの内側なので、通ればチャンスは大きくなる。

 横浜FMがインナーラップを多用しているのは、攻撃時にウイングプレーヤーがタッチラインいっぱいに開いているからだ。開いているウイングへパスが入ることで、インサイドハーフやサイドバックがインナーラップを仕掛けやすくなっている。

 今季の横浜FMはビルドアップの時にサイドバックが内側へ入る形をよく使っている。サイドバックがハーフスペースの入口に立つので、ウイングはタッチライン沿いに開いてパスコースを作る。ウイングまでボールを届けることは容易だった。ただ、そこからの打開策が見えていなかった。ウイングへボールを供給しやすいビルドアップを使っている以上、ウイングに1対1の優位性があるはずなのだが、そこまでの優位性は感じられなかったのだ。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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