人種的な多様性と即興的強さ 崩壊リスクも抱えたW杯王者フランスの“諸刃の剣”

ロシア・ワールドカップで優勝したフランス代表【写真:Getty Images】
ロシア・ワールドカップで優勝したフランス代表【写真:Getty Images】

コレといったイメージがないリーグ・アンとロシアW杯のフランス代表

 ロシア・ワールドカップ(W杯)で優勝したフランス代表は、もともと多人種による多様性が特徴だった。多様性を生かせば穴のないチームになるが、まとめ方がけっこう難しい。フランス代表も上手くいったり失敗したりしてきた。

「多人種構成」はクラブチームも同じだ。ところで「リーグ・アンのサッカー」というと、どのようなイメージがあるだろうか。イタリアのセリエAなら、堅固な守備をベースとした戦術的なスタイルがイメージできる。スペインやポルトガルは技術の高いテクニカルなサッカーを想起するし、プレミアリーグはハードワークとフィジカルコンタクトの激しさがある。ところが、フランスのリーグ・アンにはコレというイメージはない。

 パリ・サンジェルマン(PSG)は1990年代からブラジルの選手が多く在籍していて、なんとなくブラジル的なサッカーをするイメージはある。レンヌやギャンガンなどブルターニュ地方のクラブは手堅いカウンターのスタイル、マルセイユやカンヌはアフリカ系の選手が多いパワフルなイメージと、個々のクラブにはそれぞれの特徴があるわけだが、それほど確固とした伝統は感じられない。そもそも各クラブがバラバラすぎて、リーグ全体のイメージというと何も思い浮かばない。多様な選手で構成されているので、チームも多様だからだ。

 オランダのアヤックスのように、こういうサッカーというイメージが先にあって、それに合った選手を獲得し、育成するというチーム作りになっていない。フランスではその時に在籍している選手に合わせてチームを作っていく。これはフランス代表においても同じと言っていいだろう。

 ロシアW杯のフランス代表メンバーを見ると、MFとFWに関してはあまり同じタイプを選んでいない。FWオリビエ・ジルーは高さと強さのあるセンターフォワード(CF)だが、バックアップは誰かというと同じタイプはいないのだ。もしFWキリアン・ムバッペがプレーできなければ、右サイドハーフの控えはおそらくFWフロリアン・トヴァンなのだが、ムバッペとは全く特徴が違う。決勝でMFエンゴロ・カンテと交代したMFスティーブン・エンゾンジは見た目からして全然違う。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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