サッカー界の絶滅危惧種 欧州で激減する「ワン・クラブ・マン」

カシージャス、シャビ、ジェラードら生え抜きの移籍相次ぐ

 イケル・カシージャス、シャビ・エルナンデス、スティーブン・ジェラード、バスティアン・シュバインシュタイガー。錚々(そうそう)たる顔ぶれのこの4選手は、今夏に新天地を求めたスター選手たちだ。彼らに共通しているのは、いずれも母国のクラブで欧州チャンピオンズリーグ制覇を経験しているということ。30歳を超えて初めての移籍であるということ。そして、全員が下部組織からクラブ一筋でプレーしていたチームの象徴的な選手だったということだ。米ESPNも「ワン・クラブ・マン(一つのクラブでプレーを続ける選手)」が絶滅絶滅危機にある、と特集している。
 
 現在も代表選手としての活躍が期待されるスペイン代表のカシージャスとドイツ代表シュバインシュタイガーは、それぞれレアル・マドリードから隣国ポルトガル強豪FCポルト、バイエルン・ミュンヘンからマンチェスター・ユナイテッドと欧州内での移籍となった。
 2014年ブラジル・ワールドカップを最後にスペイン代表から退いたシャビは3冠達成を置き土産にバルセロナからカタールのアル・サッドへ旅立った。同じくイングランド代表を引退したジェラードはリバプールを離れ、アメリカのロサンゼルス・ギャラクシーへ移籍した。
 カシージャス、シャビ、ジェラードの3選手はクラブで主将の重責を担い、バイエルンの副主将だったシュバインシュタイガーもドイツ代表ではキャプテンマークを巻くなど、常に先頭に立ってチームを牽引する模範となってきた。クラブへの忠誠心を持ったレジェンドは、自国に残り愛着あるクラブとの対戦を望まず、キャリア初めての移籍で異国の地での挑戦を選択した。
 
 下部組織時代も含めれば、カシージャスとジェラードは25年間、シャビが24年間、シュバインシュタイガーは17年間という長い時間を一つのクラブで過ごしてきた。キャリアの大半というだけでなく、人生の半分以上をクラブに捧げてきた。
 
 彼らのようにクラブ一筋のまま、キャリアの晩年を迎えているプレーヤーとしては元イタリア代表のフランチェスコ・トッティの名前が挙げられる。9月で39歳を迎えるトッティは、1989年にローマの下部組織に入団。27年目のシーズンへ向かおうとしている。
 
 そのローマの”王子”は先日、伊地元紙「イル・メッサジェーロ」に対し「今年はここ(ローマ)にいるが、来年のことは分からない」という言葉を残している。今季がラストシーズンを迎える可能性もありそうだ。
 「ワン・クラブ・マン(一つのクラブでプレーを続ける選手)」はいまや姿を消しつつある。トッティに以外にもバルセロナのアンドレス・イニエスタ(31歳)やリオネル・メッシ(28歳)、ローマのダニエレ・デ・ロッシ(31歳)らもクラブ愛を貫く選手として知られるが、年齢的にはまだ引退は遠い。
 フランコ・バレージ、パオロ・マルディーニ(元ミラン)やライアン・ギグス、ポール・スコールズ(元ユナイテッド)など、かつてはクラブ一筋のまま現役生活終えた選手は存在した。
 移籍が年俸を急激に高めるチャンスとなるために数年で移籍を繰り返す選手や、高額年俸などの好待遇でキャリアの晩年に中東やアジアなどへ活躍の場を求めるケースが多い欧州サッカー界で、偉大な「ワン・クラブ・マン」は今後現れるのだろうか。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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