準優勝の呪縛 「アルゼンチンのメッシ」に用意されるリベンジの舞台

手からこぼれ落ちた栄光

 
 かつてバルセロナで戦友だったチリ代表のアレクシス・サンチェスがGKの動きをあざ笑うかのように、ゴール左隅にシュートを流し込んだ瞬間、スタジアムの観衆は歓喜を爆発させた。ホスト国チリが、初のコパ・アメリカ制覇を決めた。
 アルゼンチン代表の背番号「10」は、呆然と前を見つめていた。0-0で迎えたPK戦では、1人目のキッカーを務めた。きっちり成功させ、残りの命運をチームメートに預けた。しかし、勝利の女神は彼に微笑むことはなかった。
 リオネル・メッシが初めてコパ・アメリカの舞台に立ったのは2007年。準々決勝ペルー戦、準決勝メキシコ戦でゴールをあげ、決勝まで駒を進めたものの、ブラジルに0-3と大敗。最後の最後で涙を飲んだ。2ホスト国として威信をかけた臨んだ11年大会では、決勝トーナメント1回戦でウルグアイ相手にPK戦で競り負けた。まさかの早期敗退を味わうことになった。
 昨年2014年のワールドカップブラジル大会では、決勝戦で延長の末、ドイツに敗れた。あと一歩のところで優勝を逃した。世界最高の選手として君臨するエースは、またしても代表で栄冠を掴むに至らなかった。
 そして迎えた今大会。メッシはバルセロナで3冠を達成し、最高の状態でコパ・アメリカの舞台に帰ってきた。それでも、待っていたのは、唇を噛み締め眺めた、同じ景色だった。
 準優勝。アルゼンチン代表としてのメッシは、呪縛に苦しみ続けている。その連鎖を断ち切る最高の舞台は、整ったはずだった。準優勝で難敵パラグアイを6-1で一蹴。代表チームの状態も、チャンピオンにふさわしいものだった。それでも、栄光は再びその手からこぼれ落ちていった。
 

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