日本の“時間稼ぎ”への世界的な批判を生んだ、「サッカー先進国」の色眼鏡

ポーランド戦終盤の消極的なパス回しが賛否両論を生んだ【写真:AP】
ポーランド戦終盤の消極的なパス回しが賛否両論を生んだ【写真:AP】

ポーランド戦終盤の消極的なパス回しに各国メディアが賛否両論

 ちょっと話は古くなる。6月27日のロシア・ワールドカップ(W杯)グループF最終戦、韓国対ドイツ戦をヴォルゴグラードのメディアセンターで観戦していたが、後半アディショナルタイムに韓国が先制点を奪うとメディアセンターには大歓声が響き渡った。

 判官贔屓はサッカー界でも万国共通。さらに現行のグループリーグ制を採用してドイツ(西ドイツ時代を含む)が敗退するのは史上初とあって、誰もが歴史的な瞬間に立ち会えた喜びを爆発させた。

 タイムアップまであと数分。日本人カメラマンは「初めて韓国を応援した」と韓国の勝利を期待した。なぜかというと、記者はW杯でもしっかりとスタンドの一角にスペースが確保されるため、自国の試合では必ずと言っていいくらい記者席で取材することができる。しかしカメラマンは、いくらスタジアムが大きくなろうとも、ピッチのサイズは変わらない。そのためゴール裏に入れる人数はいつも決まっているからだ。

 そしてW杯で一番メディア(カメラマン)の数が多いのは、当然ながらサッカー大国であり、いつも優勝候補のドイツだ(開催国を除く。ちなみに2番目はイングランドで3番目は日本)。そのドイツがグループリーグで敗退すれば、多くのドイツメディアは帰国する。つまりピッチに入れる可能性が高まるため、ドイツの敗退を歓迎したというわけだ。

 韓国は2連敗していたためグループリーグ敗退は決まっていたものの、ドイツを歴史的な敗北に追い込み有終の美を飾った。ソウルでは多くのファンが広場に集まり、喜びを爆発させているシーンをテレビで見た。自国の快挙に喜ぶファンの姿は、見ていて嬉しくなった。

 といったところで、本題に入ろう。翌日の日本対ポーランド、日本が0-1で敗れているにもかかわらず、終盤に後方でボールを回して時間稼ぎをし、ベスト16に進んだ。このことについて、世界各国から賛否両論の意見が出た。

 基本的にメディアは、他国のチームに対して無責任な発言が多い。特にイングランドのメディアは、彼らにとって格下の日本が消極的なサッカーをしたのだから批判的になるのは当然だ。

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六川 亨

1957年、東京都生まれ。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年に退社後はCALCIO2002、プレミアシップマガジン、サッカーズ、浦和レッズマガジンなどを創刊して編集長を務めた。その傍らフリーの記者としても活動し、W杯や五輪などを取材しつつ、「サッカー戦術ルネッサンス」(アスペクト社)、「ストライカー特別講座」、「7人の外国人監督と191のメッセージ」(いずれも東邦出版)などを刊行。W杯はロシア大会を含め7回取材。現在は雑誌やウェブなど様々な媒体に寄稿している。

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