「技術委員長」を「日本代表監督」に据える失策 “消極的”勝利至上主義が招いた窮地

たとえW杯ベスト16入りを果たしても…

 西野新監督が、技術委員長としてこうあるべきだと考えていたサッカーを実行できるならまだしも、メンバーの選定さえあまり自由のない状態で指揮を執ることに、ほとんど意味はない。監督解任という技術委員長としての失敗を、自分の責任において穴埋めする行為にすぎないのではないか。

 ハリルホジッチ監督を解任するなら、西野技術委員長の本来の仕事は次期監督を選定することだった。その時間さえなく、自らを人質のように差し出すことになったのは下策と言わざるをえない。

 西野技術委員長は監督解任を阻止すべきだった。急に低下した求心力なら、急に上げることも可能だったのではないか。まだ選手選考という切り札もあるのだから、監督を信頼していない選手を切り捨ててしまえば成立したのではないか。

 もう監督交代しかない――そういう判断だったとしても、技術委員長を監督にするのだけは避けるべきだった。例えば、大会後に総括と分析をし、なんらかの結論を出すのは誰なのか。次の進化への検証を本気で行うつもりはあるのか。次の監督が来れば、また方針はその人に任せるだけなのか。たとえ西野監督でW杯ベスト16入りを果たしたとしても、残念ながらもっと大きなものを失いかねない。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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