ハリルはJ得点王の武器を理解していない? いまだ見出せない「引いた相手」への打開策

個の力に頼った課題克服は困難

 川崎の選手たちの「眼」でないと、小林を見つけられないのだ。近くに敵がいるので、「小林はフリーではない」と思ってしまう。川崎の選手から見れば小林が「フリー」でも、そうは見えない。周囲の眼もタイミングも違う中で、小林が川崎と同じプレーをするのは無理である。

 ハリルホジッチ監督は小林に川崎とは違うプレーを要求していた。背後のスペースがなくならないうちに裏へ走ってパスを引き出すプレーだ。しかし、それならば最初からFW伊東純也(柏レイソル)で良かったと思う。小林に伊東や、あるいはFW浅野拓磨(シュツットガルト)のようなプレーを期待するのはナンセンスである。小林に小林のプレーをさせるには、川崎のチームメイトが不可欠だ。MF大島僚太、阿部、車屋を近くに置いてやれば、小林は小林らしいプレーができるだろう。

 ハリルホジッチ監督はこれまでも、課題克服の糸口をつかもうとMF柴崎岳(ヘタフェ)を試し、MF小林祐希(ヘーレンフェーン)、MF森岡亮太(ワースラント・べベレン)を試した。今回も負傷しなければ、MF清武弘嗣(セレッソ大阪)も起用していたはずだ。しかし個の力で、W杯グループリーグで戦うコロンビア、セネガル、ポーランドの守備ブロックを崩すのに、どれだけの効果があるだろうか。むしろ連携で崩すこと、身体能力に依存しないで崩す方法を採用してもいいのではないか。それには、“川崎のセット”は打ってつけなのだ。

 ところが、事はそう単純でもない。例えば、大島、阿部、車屋、小林をセットで起用した場合、堅守速攻のベースが揺らいでしまう。基本は裏へ蹴ってFWを走らせる攻撃とプレッシングがメインなのだ。その方面のパワーを最大化しようとすると、川崎のセットを先発で使うのは難しくなる。

 

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