川崎に広島以上の黄金期到来? “創業者”のアイデアを継承し輝かせた“二代目”の手腕

川崎が継承したのは「形」ではなく「原理」

 ミシャ式可変システムを継いだ森保監督は、J1に3回優勝する黄金時代を築いた。鬼木監督が引き継いだのは、風間前監督が遺した「原理」だ。ボールをどう止めるか、いつ周囲を見るか、パス&ムーブやプル・アウェーをどう行うか……。

 継承したのはプレーの原理であってシステムではない。形はないので、その点では鬼木監督の方が自由だと思う。引き継いだのは素材なので、それをどう料理するかについて制約がないからだ。形は古びてしまえば価値が減少するので鮮度を保つ努力が必要だが、それにも限界はある。

 一方、原理については古びることがない。それは昔から変わらないもので、丸いボールと人体が変化しないかぎり同じという普遍性がある。それが受け継がれる限りは、いくらでも形は変えられる。つまり、川崎は広島以上に長期の黄金期を築く可能性がある。

 もちろん、強さは選手のクオリティーに大きく左右される。川崎には世代交代という課題があるが、賞金が跳ね上がったタイミングで優勝しているので補強はできるはずだ。来年はパイオニアの風間監督率いる名古屋グランパスがJ1に来る。かつての浦和と広島のような同じ流派の対決となるわけだ。他にも強力なライバルがいて追われる立場の難しさはあるけれども、川崎はさらに進化するのではないだろうか。

【了】

西部謙司●文 text by Kenji Nishibe

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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