ブラジル戦リベンジへ「戦い方は変わる」 上田綺世不在の痛手…理想はプレミアFWで“戦術カタール”

上田綺世不在でFWの最適解は?【写真:徳原隆元】
上田綺世不在でFWの最適解は?【写真:徳原隆元】

上田綺世が不在のFW陣で最適解は誰か?

 AFCアジアカップ2027(サウジアラビア)の約1年延期が決まり、年内で退任することが確実になった日本代表の森保一監督。12月30日に予定されている国際親善試合は開催が不透明になっているため、11月10〜17日のシンガポール遠征が現体制のラストという可能性も否定できない。

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 しかも、14日の初戦の相手は2026年北中米ワールドカップ(W杯)ラウンド32で苦杯を喫した宿敵ブラジル。17日のパラグアイ戦も重要なゲームではあるが、やはり最大のターゲットは初戦になるはずだ。

 そこで、指揮官が選んだ28人のメンバーに目を向けると、5年ぶりに招集された坂元達裕(コベントリー)や初招集の福田師王(カールスルーエ)のようなフレッシュな選手を除くと、基本的には常連組中心。こうしたなか、気がかりなのが、絶対的エースFW上田綺世(リール)の不在である。今夏、フェイエノールトからリールへ赴いた28歳の点取り屋は10月13日のUEFAチャンピオンズリーグ・アーセナル戦で左足の足底筋膜断裂のけがを負い、現在は戦線離脱中という状況なのだ。

 森保監督も4日の代表メンバー発表前から彼の招集見送りを示唆していたが、2025年10月のブラジル戦で決勝弾を叩き出し、9月・10月シリーズでも4発と絶好調だった最大の得点源を欠くのは、やはり大きなダメージにほかならない。

「綺世は9月10月の戦いでも得点をしっかり決めてくれて、チームを勝たせているという部分では大きな存在感を示してくれている。彼がいないことで、今回のシンガポールでの戦い方はもちろん変わってくる部分はあると思います。ただ、誰かが抜けてチーム力が下がる、チームがガタガタになるというチーム作りはしていない」

 指揮官がそう語気を強めたとおり、まさに14日のブラジル戦では“上田不在のオプション”が求められることになる。

 今回の1トップ要員は、9月・10月シリーズでも同ポジションで先発している前田大然(イプスウィッチ)と後藤啓介(フライブルク)、2026年W杯以来の復帰となる小川航基(FC町田ゼルビア)、新顔の福田という4枚。前回シリーズの松木玖生(サウサンプトン)ら一部の特例を除き、森保監督は初招集の人材をいきなりスタメンに抜擢するようなリスクは冒さないため、福田はスタメン候補から除外していいだろう。

 となると、ブラジル戦の先発候補は3人。前田を起用する場合は、2022年カタールW杯のドイツ戦・スペイン戦のようにアグレッシブにプレスをかけに行き、カウンターを狙うという『戦術カタール』的なスタイルになりそうだ。

 今季から世界最高峰のプレミアリーグに初参戦している前田は以前より最前線で相手を背負ってターゲットになったり、攻撃の起点を作ったりするような仕事ができるようにはなっている。だが、やはり武器は裏抜けとスピード。それを生かして攻守両面でハードワークしてもらい、ワンチャンスを狙っていく方がメリットは大きそうだ。

 ブラジル相手だと、どうしてもボール支配率で下回る可能性が高いため、前田を置いて守備重視でスタートした方が日本としても戦いやすいのではないか。現状では「1トップ・前田」というのが、ブラジル戦で最も可能性高いと起用法と見ていい。

 それに続くオプションと言えるのが、小川を据える形。森保監督は第2次体制の2024〜2026年に小川を上田とともに主軸FWに据えており、W杯でもオランダ、スウェーデン(ともにダラス)、ブラジル戦(ヒューストン)の3試合に後半途中から起用。信頼の高さをのぞかせた。

 上田不在の今、小川の存在価値は確実に高まっているはず。本人も町田への移籍を経て、徐々にコンディションを引き上げているだけに、意欲は高いに違いない。

 しかしながら、小川は典型的な『ボックスストライカー』。前田ほどの『鬼プレス』は難しいし、上田のように幅広いエリアに動いて体を張ったポストプレーを見せるのはやや難易度が高い。「上田の代わりとして小川を当てはめる」といった使い方はできないため、対戦相手の出方に応じた戦い方が必要になってくる。

 そういった条件を踏まえると、やはり小川はW杯と同様に途中から使って、ダイレクトにゴールを狙ってもらうのが一番いい。そこに特化した方が本人もやりやすいだろう。もちろん小川自身は「先発で出たい」という意欲も野心もあるだろうが、まずはジョーカー的な立場から攻めていき、ブラジルを撃破するゴールに集中していくのが得策ではないか。

 もう1人の後藤を思い切って抜擢するというのも一案ではある。後藤は191センチの長身を誇る万能型プレーヤーで、守備のハードワークもできるし、足技も巧みで、シュート能力も高い。伸びしろや期待値を考えれば、思い切って21歳の彼を抜擢することも考えられる策だ。

 とはいえ、後藤は今季赴いたフライブルクでトップ下を主戦場にしている。9月・10月シリーズ後は10月11日のブンデスリーガ・シャルケ戦、28日のDFBポカール・ヴォルフスブルク戦でゴールを奪うなど、着実にドイツのレベルに適応し、自身の良さを発揮できるようになりつつあるが、普段から1トップでプレーしていない点が少し引っかかる。

 上田もセルクル・ブルージュ時代に2列目で起用された経験があるが、やはり彼が1トップとして大きく飛躍したのは、フェイエノールトでの取り組みの成果だ。そこでファン・ペルシー監督の下、相手を背負いながらボールを収め、起点を作る取り組みを徹底的に行ったからこそ、今のようなどっしりとした最前線のターゲットマンに進化できた。

 そう考えると、後藤は日々の環境的にやや不利。そういう状況下でブラジル相手にどこまでやれるかをぜひ見てみたいところだが、森保ジャパン集大成となるリベンジマッチで勝ちにいこうと考えるなら、やはり最も計算できる前田のスタート起用が有力ではないか。

 いずれにしても、FW陣がゴール前の鋭さを前面に押し出し、得点という結果を残さなければ、上田不在の穴は埋められないし、2025年10月のブラジル戦に続く2勝目を手にすることはできない。今回は1年1か月前のキャプテンだった南野拓実(モナコ)も復帰し、チームに活力を与えてくれる。今回招集されたFW陣や復帰組らの力を結集して、「ガタガタになるチーム作りはしていない」と自信を見せる森保監督の集大成となる最高の戦いを期待したいものである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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